桐青

□3つの影
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黒くて中型、茶色い眼の上には同じ色のタン、首周りに白と足周りに金色に近い茶の混じった毛色。
耳は半立ちでしっぽをぶんぶん振ってオレの少し前を歩く。


準さんに『散歩しない?』ってメールをして準さん家に向かっていると、前からポケットに手を入れて欠伸をしながら歩いてくる影を見つけた。


「準さんッ!」

「うわ!なんだそいつ!!」

手を振って走り寄るとオレより先に勢いよく跳び付く物体にビックリする準さん。

「あ〜、この子ねいっとき預かってるの」

かわいいでしょ?とニッコリ笑う利央とピョンピョン跳び付いて来る犬。
犬はどちらかというと好きだがテンションの高すぎるそいつにたじろぐ準太。




とりあえず歩き出した3つの影。
小さな影はようやく落ち着き2つの大きな影の間で動く。

「こいつ、犬種なに?珍しい色…」
「ボーダーコリーだよ。知ってる?」
「ん〜…知らねぇな」
「原産国はイギリスだったかな〜?牧羊犬って言ってた」



夏休みに入った小学生のいる親戚に、旅行に行くからと預けられた犬。
きつい練習の続く夏、今日はほんの少しだけ部活が早く終わった。


結構な運動量を要する犬種のため、散歩に行かなければならないので、ついでに少し走り込みでもと考えていたが…あれよあれよと頭の中は「準さん」になっていた。



だいぶ歩いた所で河原に腰掛ける。
準太は愛しそうに犬を撫でる利央をじっと見ていた。

「利央ー」
「ん?なぁに?」
「りおう」
「準さん?」
「…りお」
「?…!!」

犬越しに準さんから触れるだけのキス。
すぐに離されて顔も背けられ、舌打ちも聞こえた。


か、かわいい〜!
絶対顔紅くなってるよねェ!!


「準さん…」

準さんの後頭部に手を回し自分の方を向かせ唇を強く合わせる。ちゅっちゅと音を立てて何度もキスをすると準さんから甘い息が洩れた。



「準さん、どうしたのォ?」

オレが尋ねると、別にって言って紅くなった顔を隠すように手の甲を口に当てる。


訳のわからないといった笑顔を返すと顔をしかめてまた睨まれた。
おまけに聞こえるか聞こえないくらいの小さい舌打ち付き。

え?なになに!オレなんかした!?


そしたらまた、今度は噛み付くようにキスされて、そして真っ直ぐに見つめられた。

「俺といんのに犬ばっか触ってんじゃねぇよ」


あ、ああ…そうゆうこと。
オレ無意識のうちにずっと犬撫でてたんだ。
月明かりに照らされた準さんがホントにキレイで…触れたいなぁって思ったんだけど、外だとイヤがるから。


ゴメンね?ってそっぽ向いてしまった頬にキスして、こっちを向いた唇に覆うように自分のを重ねる。
角度を変えて何度も重ね、舌を入れ込む。

僅かな水音と甘い声に、2人の下にいた黒い物体がもぞもぞと動きペロペロと2人の頬を舐めた。

「ぶはッ!くすぐってぇ!!」
「ちょ…やめて〜」


先程まではぁはぁと体温調節していてようやく息を整えた犬によって、甘い時間は途絶えてしまった。


オレがくすっと笑うと準さんも微笑んでくれた。
その顔を見るとまたキスしたくなったけど、もう帰らないといけない時間だし。

我慢だと自分に言い聞かせて、帰ろっか。と立ち上がる。
でも、最後に少しだけ…と準さんを引き寄せて抱き締めた。ちょーし乗んなって殴られるのを覚悟してたけど、返ってきたのは背中に回された腕。

それが嬉しくって、キスしていい?なんてさっきの決意はどこへやら。

「今度は邪魔入んねぇからな」

ニヤっと笑ってキスしてくれた。
ゆっくり離れた準さんの顔は照れた表情でなんとなく紅く見える。

もう、無自覚なの!?わざとなの!?
かわいすぎだってば!





漆黒に光る準太の髪と犬の体。
太陽のように光る金色の利央の髪と犬の後肢。
月明かりに照らされて歩く3つの影。





2009.07.24


 

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