桐青

□甘い罠
1ページ/1ページ


「じーんー」

「慎吾さん」

「じーんー」

「慎吾さん」


気持ちのいい青空をバックにクローズアップされた慎吾さんが映る。

「迅…」

慎吾さんの声は、好き。
俺のより断然低くて優しい。
特にいま。
「俺だけの」慎吾さんの声は俺しか知らない。
耳にすんなり入ってくる声は身体中慎吾さんで埋め尽くす。


その感覚がなんとも言えなくて、両手に持ってる慎吾さんの制服の袖をきゅっと握った。


「迅はかわいいなあ」

否定しようとした言葉は慎吾さんによって封じられた。
避けようにも後ろは壁で。肩に置かれた手がそれを許さない。


「…迅…」
「……んごさ…」


何度も何度も啄ばむように、たまに押し付けるように唇を合わせた。
もうそれだけで心臓はばくばくで。きっと慎吾さんは全然ヘーキなんだろうけど、俺は…


「迅、どうした?顔赤いぞ」
「…し、慎吾さんのせいですっ!」

また俺をからかって涼しい顔してる…!
そんな顔もかっこいいのだから俺の顔に集まった熱も治まらない。


「俺のこと好き?」

そんな今聞かなくても判りきってることを、ワザと聞いてくる。

だからちょっと…

「…どうでしょうね?」

なんてカワイクないこと言ってみる。

「そっか」

眉を下げて笑う慎吾さんがなんだか悲しくなって、言って後悔する。

「俺も迅のことよく…
「ぁ…や、好きです!慎吾さん!」

言葉を遮られてぽかんとしてる慎吾さんに、言ってしまったことにまたも後悔する俺。

くしゃっと俺にしか見せない顔で、本当に嬉しそうに笑う慎吾さんにドキっとしながら、またやられた、と思う。
いつも慎吾さんが一枚上手なんだ。


「俺も好きだよ、迅」


頭を引かれて少し低い位置に抱き寄せられた。
ちょうど慎吾さんの胸のあたりに耳が当たる。


ドク‥ドク‥ドク‥ドク‥


心地よい心音は少し速い。



なんだ。俺だけじゃなかったんだ。
やっぱり慎吾さんは一枚上手だ。

どこか遠くで昼休み終了の予鈴が鳴った。


2009.9.17

初!島迅☆


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ