桐青
□一緒に帰りませんか
1ページ/1ページ
『慎吾さん、誕生日おめでとうございます!』
9月21日00時25分
迅からのメール。
仲の良い後輩で、トクベツな人。
やっぱり好きなやつからのお祝いメールは嬉しいものだ。お礼のメールを返して眠りについた。
朝目が覚めると迅から返事があった。それにまた返事を返す。
授業が始まってもメールが返ってくるから俺も返した。
『今なんの授業?』だとか
『この問題がわからないんです』だとか
初めてこんな他愛もないことを、色のない短文なメールを延々とした。
そろそろ話題を変えようかなというところで迅の方から
『今日一緒に帰りませんか』
とお誘いを頂いた。
いつも一緒に帰ってるのに、と思いつつもちろん誘いを受けた。
部活が終わり先にシャワーを浴び着替えて、最後まで片付けを済ませて着替え始めた迅を待つ。
そういえば帰りはいつも俺が「迅、帰るか」と誘っていた。方向が同じやつらと一緒に帰ったり、その中でも2人で話しながら並んで歩いたり。
はあ〜俺迅たん好きだなあ…
なんてしみじみ思う。
「お待たせしました!慎吾さん、帰りましょう」
少し高い声に意識を呼び戻され、「お疲れ」とみんなに挨拶をして部室を出た。
迅と2人きりで帰るのは久しぶりな気がして、暗いのをいいことに周りに誰もいないことを確認して、迅の手を取った。
また他愛もない話をしながら、人通りの少ない道をゆっくり歩いていたら1本の街灯の下で迅が立ち止まった。
「あの、慎吾さん」
「ん、どうした?」
「誕生日プレゼント、買いに行く時間なくて…」
「ああ、いいって。俺もそうだったじゃん?」
俺も迅の誕生日にプレゼントらしい物は渡せなかった。
お互い買いに行く時間がないのはわかってることだから、プレゼントはいい、と言っておいた。
「だから…目、瞑ってください」
「ん……」
視界が無くなった分他の感覚が研ぎ澄まされた。
衣擦れの音がしたと同時に唇に温くて柔らかい、よく知ってる感触がした。
それはすぐに離され惜しむように目を開くと、街灯に照らされた顔は紅く染められていた。
「…これが…プレゼントです…」
言いようのない愛しさやらなにやらがぶわっと込み上げてきて、目の前の可愛い人を抱き締めた。
「ありがとう、迅。」
「こんなんで良かった、すか…。俺、慎吾さんに喜んでもらいたくて…」
「ん。嬉しいよ。迅からのキスは初めてだし、今日は一日中迅のこと考えれたし」
「慎吾さん…誕生日おめでとうございます」
照れたように笑う迅たんがもう可愛くて可愛くて…!
俺の独り善がりじゃないんだな。
俺も好かれてると思ってもいいよな。
来年も再来年も、こいつに祝われたい。
9/21
慎吾さんHAPPY BIRTHDAY
2009.9.21
SSSに入りきらなかった…