桐青

□3月8日
1ページ/1ページ


入学、卒業。出会い、別れ。
せわしく過ぎていく日々の中、俺達の新しい季節が始まった。



「ふぁ…は」
「ん……あー、おはよ」

隣に寝ているまだ眠気眼の山ちゃんに思わず笑みが零れる。
だってこれから毎日、起きたら隣にいる。一番にこの顔が見れる。
なんて贅沢だろう。


新たな世界の入り口に立った今、一人じゃないと気付いた。
想って、想われて。
求めて、求められて。

瞳を閉じればいつも山ちゃんの笑顔があって。
俺達一緒にいられるんだって。
同じ道を選んだ、それがどれだけ心強いだろうか。



二人分の洗濯物が風に揺れる。
昼前の空に浮かぶ白い月が、こんな風にきれいに見えたのはいつぶりだろう。
夏も冬も、汗を流していた時のことを思い出した。

「やーまちゃん、なに見てんの」
「んー?…つき。」
「月?」
「そ。空なんて、久しぶりに見たなーって。」


ケンカもした、別れも考えた。何度も。
でも
天を仰げばなんて小さいことだろう。
モトと過ごしてきた日々はどんなことも愛おしい。

空は青くて、凛としてて。
雲は形を変えながら流れる。

「あ、あそこ。桜じゃね?」
「ほんとだ。もう咲いてんのかー」

花が咲く、そんな小さな喜びも分かち合えるなんて、なんて幸せだろう。
この先もずっと、隣で…。


瞳を閉じれば、いつも。
少し上で笑うモトの横顔が浮かぶ。
その顔がだいすきで。心強くて。

「ねえ、」
「なに?」

モトにとって俺も、そうだったらいい。

「なんでもない。」
「…好きだよ、山ちゃん」

後ろから回される腕。
上を向けば落ちてくるキス。


3月の風に想いをのせて…。


♪3月9日

2010.3.8

本山ノ井記念日。


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ