らーぜ☆
□First kiss
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気付かないフリ
したかったんだ
こんなにも好きだなんて
まだ暑さの残るグラウンドで部活をしていたらいきなりの夕立。
ドカーンという雷を交えた大粒の雨が降ってきて、みんな近くの物陰に避難した。
俺と田島は端の方で投球練習をしてたから、近くの倉庫に2人避難した。
「すっげぇな…マウンドとか見えねー」
田島の言う通り、数メートル先は真っ白で見えない程視界が悪い。
そんな見えない向こうのことより今は、目の前のこいつに目が行って仕方ない。
汗とは違う、外側から濡れた髪やユニフォームがなんかこう…すごくそそられて。
いらぬ感情を抱きそうになる。
――ドカーン
ピカッと光ったすぐ後に物凄い爆発音がした。
それで我に返った俺は、田島の肩がビクリと動いたのを見逃さなかった。
「なに、雷怖ぇの?」
「ち、ちげーよ!!…怖くないことはないけど…いきなりでかい音したら花井だってビビるだろ!?」
う…やばい。かわいい…!
それ以上俺に近付くな。
田島を直視できなくて目を逸らす。けど、田島は何も言ってこない俺の顔を不思議そうに覗く。俺の気も知らないで。
「はない?……っ!」
なにが起きたのか判らないのはお互い様。
…え、
田島を抱き締めていた。
頭の奥で鈍く警戒音が響いてる。
ダメだ
イケナイ
入り込むと抜け出せない
二度と戻れなくなる
判ってる。だから早く
離さなきゃいけないのに脳が腕に身体に、離せと伝達しない。
「は…ない…?」
お前が悪いんだ。
雨で濡れたお前が。
口を尖らせて上目使いで見上げるお前が。
必要以上に近付いてくるお前が。
田島が顔を上げる。
どんな顔でどんな言葉を言ってくるだろう。
予想もできないことをぐるぐる考えていたが、田島の顔は予想外のものだった。
例えば大好きな野球を何日もお預けされ、いつ『よし』をもらえるか分からないなか、ふいにもらえてやっと野球ができる、というキラキラした目。
例えば頑張ったご褒美にもらえる大好きな食べ物を目にした時のような表情。
今まさにそんな顔をしている。
大好きなものを待ち望んでたような。
「はやく」
…もう手遅れ
俺は田島にキスをした。
2009.9.5
ハナタジの日記念☆