らーぜ☆

□シアン
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好きな人からはその人が好きだと思うものをもらいたい。
好きな人には自分が好きだと思えるものをあげたい。
そしてあわよくば。それを好きになってもらえたら…なんて。



「水谷」

なんだかいつもより低めの声で名前を呼ばれて、頭の片隅でそろそろやばいかなと思ったけど、そのまま。

「なあにぃ?」
「体、キツいんだけど」
「あぁ…ごめん」

ふぁ…、と伸びをして眠りの淵から脱して栄口に預けていた体を退ける。
頭も視界もぼんやりしたまま映る目の前の栄口に、なんだか嬉しくなってへらりと笑ってみせた。
特に今日は冷える寒い寒い冬の中。暖かい小さなこたつに男2人寄り添ってる姿は、年を越したばかりのめでたい世間とはかけ離れたシュールさが漂う。

そんなことどうでもいいというようにまた眠りの誘いに乗って机上に頬を置く。
そしたら、次は。
そんなことどうでもよくなるような甘い誘いに脳が目覚める。

「文貴、起きて…」

目前にあったチョコレート菓子ではない甘さにがばっと顔をあげて声の主を見たら。

「…なんて言うと思った?もうすぐ日付変わるけど。」

さっきからずっとゲームしてる手の中の携帯から目を離さずにあっさりと言い放つ。
目が覚めたオレとは反対にちょっと眠そうな目。
相変わらずの野球漬けの毎日の中に2人で過ごせる僅かな時間。
それも、自分の誕生日に。

「ほら、なったよ。おめでとう!」
「ひゃかえぐひ〜!」

だいすきな人がだいすきな笑顔でお祝いしてくれた。なぜか頬を摘まれてるけど気にしない。
嬉しくて嬉しくて抱き締めようと手を伸ばしたら素早く身を翻された。
絶対わざとだ!

「プレゼント。はい」
「あ、わ、ありがとう!開けてい?」
「どうぞ。こういうのって水谷の方がセンスいいと思ったんだけど…」

ドキドキしながら小さな袋から小さな箱を取り出して開ける。

「香水…?」
「うん」
「栄口こういうの、キライじゃ…」
「うん。キライ。」
「え…いい、の?付けて。」

一時期付けてた時期もあったけど
「人工的な匂い好きじゃない」
って顔顰めながら言ったあの時からほとんど付けなくなった。
てっきり毛嫌いしてるんだと思ってた。

「別にいい匂いはキライじゃないよ?」
「そうなの〜!」
「これさ、水谷っぽいなって」

付けてみてよ、と言われて手首に少し。すぐに手首を鼻に持っていこうとすると慌てて止められた。

「ばか、乾いてからだよ」

付けたてのきついのなんてキライだって、とかなんとか言ってる栄口の好き嫌いの境がなんとなくわかったような気がした。

早く乾かしたくて頭上で腕を振ってみる。

「あ…なんかいい匂い」
「ど、どう…?」

今度は顔の前で軽く手首を振ってみた。

「うん、いい!」
「ほんと?」

まだ香りは強いけど甘ったるくなくてさばさば過ぎない、なんか栄口らしいな、なんて思った。
オレの腕に顔を近付けて匂いを確かめてる栄口を今度こそ抱き締めた。
よ、よし…!

「栄口といるときはいつも付けるね」
「いつもじゃなくていいよ」

「オレに包まれてるって感じ、する?」
「…お前ね…!」

あー照れてる。かァわいい。…なんて言ったらこんな時間でも構わず帰るとか言い出すから言わない。
オレの腕から逃れようとする体を自分の方へ無理矢理抱き寄せた。
すぐに力が抜けて体重を乗せてくる。こういう時は栄口のほうが折れるんだよね。

「ねえ」
「……」
「ありがと」
「ん。」

目尻にキスしたらくすぐったそうに笑うのが愛しくて何度もキスした。


…やっぱり。
好きな人からもらうものはなんでも嬉しい。
その人が嫌いなものでも。
自分のことを想って、考えて、悩んで決めたもの。
それをもらえるって
すごく幸せ!


1.4 水谷Happy birthday!

2010.1.13


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