忍足受

□跡部はぴば
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「なあ侑士、今まで跡部がプレゼントを断ったことなんかあったか?」

「え?あー…ないなぁ」



突然の向日の問いかけに、心臓が跳ねた。

一瞬崩れたポーカーフェイスをすぐに戻す。

ああ見えて向日は鋭い。

まさか親友が男と付き合っているとは考えないだろうが、油断は大敵だ。

この関係――つまり、俺と跡部が恋人同士であること――は誰にもバレてはいけない。

バレたと同時に、今までつくりあげてきた周囲の信頼や印象が一瞬で崩れてしまう。

いや、俺だけならまだいい。

跡部が偏見の目で見られるというのが1番辛い。



「可笑しいと思わね?珍しいこともあるもんだなー」

「せやな…」



騒いでいる女子を遠めに見ながら、向日と忍足は話していた。



「俺聞いたことないぜ?あいつに本命いるなんて。侑士はあるか?」

「さあ…。あいつはあんまり人にそういうこと話す玉やないやろ」

「でもさ、毎年彼女居ても自分の誕生日盛大に祝わせる癖に何が起きたんだろうな」

「さあな…。なぁ、それより岳人、数学の課題は平気なん?」



向日の顔が歪む。

上手く、話題を逸らせたようだ。



「げっ……やってねー。侑士っ!頼む!」

「はいはい。しゃーない奴やなぁ」



ノートを渡すと、さっすが侑士、と飛び跳ねた。



「あーあ。バレンタインの時みたいに授業なければいいのに」

「いらんこと言わんと早よ教室行かな。遅刻するで」

「やべ!」



向日は、忍足にお構いなしに飛び跳ねながら校門へ向かった。

忍足はそんな向日の姿に苦笑しながらも、少し足早にその後を着いていく。

すると、いきなり自らの体を後ろに引かれ、バランスを崩す。

そして体が何者かの腕に包まれた。

何が起きたのかと焦り後ろを振り向くと、よく見知った人物がニヤ、と笑った。



「あと…っ、ちょ、おい、何処行くねん、おい!」



いくら体が自分のほうが大きいとはいえ、相手は我が氷帝テニス部の部長だ。

力の差は歴然だった。

それに抵抗する理由もなく、引っ張られるがままに着いていった。
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