銀月(後)2

□夏の夜は幻
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「はぁ・・・ん。ぁ・・あ・・あ・ん・・」

夜の闇に聞こえるのは、大きな花火の音と遠くにさざめく人々の歓声。そして、自分の喉から漏れる獣じみた吐息と耳に注がれる男の熱い息遣い。

目の前の木に手をついて体を支える。体重をかけると、木の皮が手のひらをチクチクと刺激した。だが、そうでもしないと、体がこのまま崩れ落ちそうになる。

ぐちゅ、という音と共に、後ろから強く突き上げられる。刺激に耐えられず逃げようとする体を強い腕が抱きすくめ、押さえつけた。そのまま深く貫かれ、体中を電流のような快感が走る。

「ふぁ・・・あ!!」

一際高い声をあがると、息だけで男が笑うのが分かった。その無骨な手がいつも以上に熱いのは、この熱く濃密な森の空気のせいか、それとも先程からの交わりのせいか。

その両方かな、と頭の隅で考え、そんな事にまでまだ気が及ぶ自分に感心もする。

先程から男に突き上げられ、高い嬌声をあげる自分と、それを冷静に観察する自分。二人の月詠が、そこには居た。




ドドド、と一際大きな音がして、高く花火が上がり、木の陰に遮られながらもあたりを明るく照らした。

下を向いている月詠の視界に入ったのは、浴衣をほとんどはだけられ、むき出しになった自分の胸と、その乳首をつまむ男の手。もう片方の太い腕は、自分の腰をしっかりと抱きかかえている。そして、その下には裾が乱れて露になった自分の足。

そしてそんな自分が立っている草むらを目の端に捉え、此処が木の生い茂った森の中だという事を改めて思い知る。

後ろからすっと顔が寄せられ、むん、と汗の匂いがした。

「いつもより声、高いじゃん。」

「ん・・そんな・・事。」

「大丈夫だって。誰もいねぇから。」

俺しか聞いてねぇから。低い声と共に、耳に舌が差し込まれ、しゃぶりつくすように舐められる。

「他の奴には、聞かせねぇから。」

「そんな事・・・」

誰にも聞かせるはずが無い。自分がこうして女の姿になるのは、この男の前だけ。他の誰の前でも、女に、雌になる事は無い。





全て、この男の前だけ。




「銀時・・・」

体を貫かれたまま、顔だけ後ろを振り向く。花火に照らされ、男の顔が照らされた。

「何故・・怒って・・おる。」

「オメェが、悪い女、だから。」

唇の端だけで銀時が笑い、再び月詠を深く突き上げた。
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