銀月(後)2
□MY SWEET SWEET CAT
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かぶき町子供会のお泊り会に神楽が出かけたのは今朝の事。
新八も今日は休みを取っていて、銀時は久しぶりに静かな万事屋で一人ぼんやりとテレビを見ていた。
こういう時こそ月詠を家に引っ張り込みたい所だが、生憎今日は吉原でイベントがあるらしく、いともあっさり誘いは断られた。おかげで今日は寂しくも気楽な独り身だ。
ソファに寝転びジャンプを読む。
しんとした室内には、外のざわめきが遠く響くだけ。
いつもは煩わしい位の子供達であるが、いなければいないで妙に寂しい。
「エロビデオでも見ますか・・・。」
する事も無くなって、銀時は和室へ行くとごそごそと押し入れの奥を漁りだした。
ピンポン。
玄関のチャイムが鳴ったのはその時。
家賃の取り立てにはまだ早い。珍しく客だろうか?銀時は「ハイハイ」と答えつつ玄関へと歩いた。
「あれ?」
ガラリと扉を開けると、そこに立っていたのは、月詠。
珍しく大きな帽子を被りうつむいているが、見慣れた着物に見慣れたナイスバディは見間違いようが無い。
今日は忙しいと言っていたはずだが、どうしたのだろうか。
「どうしたんだ?今日は仕事じゃなかったの?」
「・・・。」
月詠は黙ってブーツを脱ぐと、ぐい、と銀時の腕を引き廊下の奥へと進んでいった。
訳のわからない銀時を引きながら、黙って奥の事務所まで歩いていく。
廊下へ続く扉を閉めると、はぁ、と月詠は息を吐いた。
「どうしたんだよ?なんかあったのか?」
「にゃん。」
「・・・にゃん??」
月詠が帽子を外す。
ぴょん、ととがった・・・茶色い猫の耳がその頭には生えていた。
「んだぁぁぁ!!!これは!!!!なんだ化け猫か!?またアイツが出てきやがったのか?????」
「にゃんにゃ。」
目を丸く見開いた銀時の顔に、はぁ、とため息をつくと、月詠が首を横に振る。
懐からメモと鉛筆を取り出し、さらさらと文字を書き始めた。
『何を言っても猫の鳴き声になるから、筆談で行くぞ。』
「あ・・・ああ。」
『実は』
月詠の話はこうだった。
今朝起きたら、猫の耳と尻尾が生えていた。しかも声を出そうとしたら全て「にゃん」と猫の鳴き声になる。
慌てて日輪に事情を伝えると、日輪が知人のつてを辿って高名な陰陽師を呼んで来た。
彼は月詠を見て「メス猫の霊がとり憑いている」と言い「害をする気はないようだが、徐霊に応じる気は無いらしい。このままでも困るだろうから除霊の方法を探して来る」と帰って行った。
翌日には方法が分かるらしいが、それまで一日、月詠は家に閉じこもらなければならない。
だが、吉原にいて大人しく閉じこもっておくなど月詠にはムリな事。ならば、と日輪から「銀さん家に行って来な」と追い出された。
確かに吉原では外が気になって仕方ない。かと言って部下にこの様な姿を見せる訳にはいかない。
除霊の方法が分かるまで、一旦銀時の所にかくまってもらおうと思い、月詠はこっそり地上へ上がってきたのだった。