長編2
□そして僕は 1
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僕の名前は山崎退。
以下は・・省略だ、そうです。
まあ、地味な存在だから、しょうがないかも。
今回は僕が主役のお話。
・・・でも、あの話をするのは、今でもちょっと切ない。
地味な上につまらない話だけど、良かったら聞いて下さい。
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「そして僕は途方にくれる」
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あれは、町内の見回りをしていた、ある平和な日の事だった。
僕が町を歩いていると、前方に見た事のある女性を見つけた。
人ごみの中でも目立つ美女。
顔に傷があるのをのぞけば、スタイルといい、顔といい、かなりの美女だった。
いや、顔の傷はかえって彼女の個性を引き立たせている・・そんな感じさえする人だった。
その人はキセルをふかしながら、周りの男たちの視線にも気付かず、歩いている。
男たちの視線に慣れているのか、それとも自分の魅力に気付いていないのか・・。
その人も僕に気付いたらしい。
少しだけ不思議そうな顔をして(多分、僕の事を思い出している最中なのだろう)「あ」と言う形に少しだけ口が動いた。
「あの・・先日は、どうも。」
「銀時の所で・・会った方じゃな。先日は失礼した。」
あの時は旦那の事しか見えていなかった風だったけど、ちゃんと僕の事は覚えていてくれたらしい。
「今日は・・また、旦那の所へ?」
「いや、今日は銀時は留守じゃった。ついでに別の用事をしようと・・・。」
そう言うと、その人は少しだけ間を置いて言った。
「その服・・ぬしは真選組の方か?」
僕が頷くと、その人は言った。
「すまぬが・・道を教えて欲しいのじゃが。」