長編2
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その日以来、僕は月詠さんのお見舞いに行けなくなってしまった。
時々新八君達から、月詠さんの記憶が戻らない事、けれど怪我の具合が回復したので、もうすぐ退院だと言う事を聞いた。
もし、月詠さんの記憶が戻らなかったら・・。
そりゃ、僕にとってはチャンスかもしれない。でも、それで良いのかな?それって何か違う気がする。
けれど、吉原という特殊な場所で育った月詠さんの過去に何があるのか・・僕は知らない。
旦那はそれを知っているのだろう。
だから、あんな事を言っているのだろう。
けど・・
けど・・・
何か言いたいけれど、僕はあくまで部外者で。
事情を詳しく知らない以上、何も言えず、それがやけにもどかしかった。
僕は屯所の庭先に座り込んで、頭をかきむしった。
そうやって悶々と悩んでいると、声をかけられた。
「オウ、ザキ、最近元気ないな。」
「局長。」
近藤さんが現れた。
「・・・どうしたんですか、その顔。」
近藤さんの顔は、思い切り殴られた跡が残っている。
誰にやられたのか・・想像はついていたが一応聞いてみる。
「いや〜お妙さんに今日もなぁ〜ああ、愛は厳しいなぁ。」
そう言ってガハハと近藤さんは笑う。
・・・やっぱり。
僕は密かにため息をついた。
何処までも姐御が好きなんだろうけど・・
見事な程バカだ・・・。