銀月(後)2

□KISS OF LIFE
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12時になると同時に、街のあちこちから歓声とクラッカーの音、楽しげな音楽が流れ出した。

屋根の上から街を見下ろしながら、月詠はキセルをふかす。

昨晩からの雪は街を覆っていたが、今日は天井を閉じるつもりは無い、と日輪は言っていた。

せっかくの新年、空を開けずしていつ開けるの?と笑いながら。

深深と降る雪を眺めて、昨年とは大違いだと考える。

雪も雨も、ましてや太陽さえ見ることさえ叶わなかった。

去年の今頃は、まさか空を見上げて新年を迎えるなど思ってもいなかった。


フフフ、と一人笑う。


人の世とは、本当に分からない。



「何笑ってるんだ。」

いきなり声が聞こえ、首に腕が回され、体が掴まれた。

「銀時?」

「やっと見つけた。」

「どうして此処に・・・?」

自分は仕事だと言ってある。銀時もそれなら俺は寝正月、と言っていたが・・・。

「神楽がな。紅白でサブちゃん見るっつてたのに、途中で寝ちまってな。」

ま、顔見に来た。

そう言って笑う。

この男も。

去年の今頃は存在も知らなかった。

その男に惚れる、という事も。ましてや、その男に愛される、という事も。

「ま、忙しいだろうから、すぐ帰るわ。」

でもせっかく来たんだし。

そう言うと、銀時は、おもむろに月詠の唇を己のそれでふさいだ。

長く、甘く、激しい口付け。

名残惜しげに銀時が唇を開放した時には、月詠の息はあがっていた。


「・・・ぬしの煩悩は、除夜の鐘程度では消えなかったようだのう。」

「108回程度じゃ消えねぇなあ。」

俺様の煩悩、ナメんじゃねぇぞ。

笑う銀時を見て、月詠は思う。

この男との出会いが神の采配なら。

神仏も捨てたものではない。


「銀時。」

「ん?」

「今年も宜しくな。」

ああ、笑う銀時に、月詠はやさしく口付けた。



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