長編2

□101年 1
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昔昔 一匹の猫がいた。

その猫は、何も持たず。

その猫は、自分を持たず。

ただ、いたずらに、時の流れに身をまかせていた。



その猫が、ある日一匹のメス猫に会った。

メス猫は、猫に愛情を与えてくれた。

猫は、一匹ではなくなった。

猫は、初めて大事なものを見つけた。



しかし。

メス猫は、猫より先にこの世から去った。

猫は哀しんだ。

自分も命を落とせば。あのメス猫に会えるのであろうか。

だが、命の先の世界を、猫は知らず。


哀しみにくれる猫はある日、寺の坊主が村の人間にしている話を聞いた。

『死んだ魂は、あの世で浄化され、再びこの世界に帰ってくる。』

死んだ猫は、心の綺麗な、優しい猫だった。

ならば、きっとすぐにこの世界に帰ってくるに違いない。

猫は、だから、待つ事にした。



長い長い年月が過ぎた時。

猫は・・・自分が普通の猫とは違う事に気がついた。

人々は猫を『化け猫』と呼んで、嫌うようになった。

それでも良い。

あの猫にさえ、会えたら。



化け猫となったそれは、長い長い年月を、ひっそりと過ごした。
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