銀月(後)2
□会いたい時に貴方はいない
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・・・銀時から、一週間以上連絡が来ない。
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会いたい時に貴方はいない
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人のもめ事に首を突っ込むあの男は、度々トラブルに巻き込まれるようで、何日か連絡が来ない事は珍しくはない。
先日も銀時が行方不明だと新八達が心配していたが、数日で戻って来た。
なので、今回も大して気にはしていなかった。
そのうちふらり、と戻ってくるだろう、と思っていた。
だが・・・
「すいません、銀さん、ちょっと忙しいらしくて・・・ずっと外出してるんです。」
日輪の用事で万事屋に電話をかけると、電話口で新八が申し訳なさそうに言った。
・・・嘘だ。
月詠は直感で、そう感じた。
おそらく、銀時は、いる。
居留守を使っている。
何となくではあるが、そう思う。長く百華を続けている月詠は、人のウソには敏感だった。
しかも相手は正直者の少年である。
その口調が、彼の言葉が嘘だと語っていた。
これは、避けられているとしか、思えない。
電話を切った後、ぐっと受話器を握りしめた。
もしかして・・・別れたいのであろうか。
それは吉原ではよくある話。
そうやって捨てられた女など、幾人も見て来た。
・・・わっちは平気じゃ。
わっちは女など捨てた身。よく考えたら今までがおかしかったのじゃ。色恋などにうつつを抜かしていたのが間違っていたのじゃ。別に悔しくなどない。これで本来の自分に戻れるだけじゃな。そうじゃ、うんうん・・・・
「月詠、全部それ、口に出てるんだけど。」
「え???」
気づくと、日輪が横にいた。
「そんなに気になるなら、会いに行けばいいじゃない。」
「別に気になどしておらぬ・・・会いたいなら、向こうから会いにくれば良いのじゃ。」
眉間に皺を寄せたままの月詠を、困った顔で日輪が見つめる。
「そんな可愛くない事言ってると、本当に見捨てられちゃうわよ。」
「捨てられるのではない。こちらが捨てるのじゃ。」
ふん、と鼻を鳴らすと、月詠は二階へあがって行った。
それを見ながら、やれやれ・・と日輪は苦笑した。