長編2
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玄関に立った桂を、新八は「どうぞ」と中に招き入れた。
「月詠殿、話があるのだが。」
「わっちに?」
桂は笑顔のまま、月詠に近づこうとした。
その時。
グルルルルル・・・・
定春が月詠の前に立ちふさがると、桂に向かって威嚇するように唸った。
「定春、どうしたアル?」
いつもと違う定春の様子に、神楽が駆け寄る。
「ヅラがどうかしたアルか?」
桂を睨みつける定春に聞いた。
「定春殿、どうしたのだ?」
桂は笑顔を崩さない。
その瞬間、定春を押さえていた神楽が、さっとファイティングポーズをとった。
「神楽ちゃん?」
「新八・・・コイツ、ヅラじゃないアル。」
「え?」
「私、今コイツをヅラって呼んだのに・・・否定しなかったアル。」
「あ・・!」
「コイツはどんな時でも、『ヅラじゃない』って言うのに・・・言わないアル。コイツはヅラじゃないネ。」
言いながら、少しずつ月詠の前に移動する。
「ククク・・・」
桂が、笑った。
新八は、ゾクリ、と背中に悪寒が走るのを感じた。
桂と言う人物は、一般市民とは相当かけ離れた感性の持ち主ではあるが、こんな笑い方は、見た事無い。
桂の笑いに一瞬気を取られた新八だったが、すぐに竹刀を手に取ると、神楽と一緒に月詠の前に立ちふさがる。