銀月(後)2
□高天原へようこそ
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客の女を案内すると、銀時は胸のポケットから飴玉を出すと一つ口に放り投げた。
今日は、この後団体客の予約が入っていると聞いている。再び忙しくなるだろう。
面倒くせぇなあ・・・とぼやいていると、賑やかな声をあげる女の集団が近づいてきた。
例の団体客だろう・・・銀時はネクタイを締めなおすと、背筋をぴんと伸ばした。
「いらっしゃいま・・・・・せ・・・ってあれ?」
どこかで見た事ある女達・・・銀時が戸惑っていると、その姿に気づいた女達が駆け寄ってきた。
「あれ?銀様?」
「あ、銀様だ。」
「何してるんですか〜???」
「お・・・オメー等、何で!」
駆け寄ってきたのは、銀時も顔なじみの吉原自警団「百華」の女達。
普段の戦闘スタイルではなく、普通の女性らしい着物姿だったので一瞬気がつかなかった。
「あ、あたし達新年会です。ずっと忙しくて正月に出来なかったんで、丁度今暇な時期にしようかって。」
「どうせなら一度地上のお店行こうって事になったんですよ。」
「そうそう、で、ついでにホストクラブって所に一度に行ってみよう事になって。」
「・・・で、銀様、こんな所でこんな格好で何してるんですか?」
「い・・いや、その。」
百華の新年会・・・まさか・・・とは思うが。
「あ、まさか頭が呼んだんですかぁ?」
「い・・いや、そういう事じゃ・・・」
戸惑う銀時を他所に、百華達は合点がいったように成程、と頷き合う。
「まったく頭ったら、一言言ってくれればいいのに。そしたらあたし達もホストクラブなんて止めて、ちゃんと銀様も楽しめるお店にしたのにねぇ。」
「あれ?その頭は?」
「ああ、後ろからついて来てるはずだけど。」
「あ、頭来た〜!頭、銀様呼んでるならちゃんと言ってくださいよ。」
女が後ろを向いて手を振る。
遅れて来た女が、銀時の姿を見て足を止めた。
普段と変わらない黒の着物をまとった女は、一瞬足を止めた後、すたすたと近づいて来た。
銀時の姿を上から下まで眺めながら、眉をひそめる。
「・・・銀時、何をしておる?」
「・・・い・・・いらっしゃい・・・ませ。高天原へようこそ・・・。」
あれ?と女達が不思議そうな顔を浮かべた。
ははは・・と強張った笑みを浮かべる銀時の顔をにらむと、月詠はふぅ、と煙を吐いた。