銀月(後)2
□高天原へようこそ
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とりあえず女達を店の中に案内すると銀時は事情を話した。
とりあえず、自分はホストでは無くただの案内役だと言う事を月詠には分かってもらわなければならない。
月詠は「ふぅん」と小さく呟くと、豪華なソファに腰かけた。
「なら、ぬしはさっさと仕事場に戻りなんし。わっち等は勝手にやる故。」
「頭、でも・・・」
「気にするな。今日はぬし等のリフレッシュが目的じゃ。好きに楽しみなんし。」
表情一つも変えない月詠に内心カチンと来つつ、だがしかし逆にあれこれ騒がれるのも困るのも確か。
ぐっと言葉を飲み込むと、銀時は狂死郎の肩を叩いた。
「つー訳で、あいつらのおもてなしは頼んだぜ。」
「良いんですか?坂田さん。あの女性、お知り合いなんでしょう?」
「いーのいいの、じゃ、俺外出るから、とりあえず後頼んだ。」
困惑する狂死郎に手を振りつつ、銀時は店を出て、外の入り口に立った。
ドアを閉めると、店のざわめきが遠くなる。
そっとドアにもたれかかると、銀時は街のネオンをぼんやり眺めた。
だが、先ほどから女達の笑い声が気になって仕方がない。
先ほどは銀時の顔色を伺っていた女達だったが、さすがは狂死郎だ。あの笑顔と会話できっと今頃は皆を楽しませているのだろう。
唯一心配なのは酒乱の事だが、それは本人も百華も良く分かっている。万が一でも飲む事は無いだろう。
狂死郎は酒の飲めない客に無理やり飲ませる様な男ではない。
だが・・・。
再び女達の笑い声が聞こえた。
「・・・あいつ、酒飲んでねぇだろうな。」
まるで誰かに言い訳するように呟くと、銀時はそっとドアを開けた。
隙間からそっと店内をのぞく。
百華達が座ったテーブルには、百華達と狂死郎をはじめとするホスト達が座っていた。
ホスト達が何か言う度に、百華達が楽しそうに笑う。
普段月詠と共に殺伐とした任務についている女達があんな風に笑うのは珍しい。
月詠が部下達のリフレッシュに、と言っていたのはまんざら嘘ではないようだ。
で、当の月詠は、というと・・・。
月詠は、テーブルの端でグラスを傾けていた。余裕の笑みを浮かべているという事は、きっと中身はウーロン茶辺りだろう。
楽しそうに笑う部下達を、少し優しげな笑みで見つめていた。
ったく、あいつ人のリフレッシュなんか気にしてる暇ねぇってのに。
自分の事を後回しにしてでも周りを想いやる、そんな月詠らしい心遣いに銀時も思わず笑みをこぼす。
だが、その時。
「・・・何してやがる、あいつ。」
月詠の隣に、一人のホストが座った。