銀月(後)2

□私を抱いてそしてキスして
2ページ/2ページ



「白夜叉。」

誰かが俺を呼ぶ。




白夜叉。

最初は誰かが「カッコイイから」と付けた名だった。だけど、そのうちその名が俺を支配するようになった。

そして、しばらく経つと俺の事を「銀時」と呼ぶ奴はほとんどいなくなった。

最後呼んでたのは3人くらいか・・?あ、一人は金時とかいい加減に呼んでいやがったけど。

でも、それでも「銀時」と名前で呼んでくれ続けたのは、あいつらくらい。

皆、白夜叉、と俺を呼んだ。





ああそうだ思い出した。あの時からだ。

この前久々にどっかのジーサンに白夜叉、って呼ばれた。

あの時からだ。

あの辺りから・・・何かが俺の中で目覚めた。








白夜叉って誰だ?

天人を斬り、惚れた女に酷い事して、それでも自分を止められない奴か?

白夜叉って俺か?

俺は・・・違う、俺は・・・・。

何でだろう、自分の名前が、出てこない。







その時、温かい腕が首に巻きついた。月詠の腕だ。

「銀時・・・。」

激しくなる動きの中で、月詠が俺の名を呼ぶ。 かすれた声で、熱い息と共に。



気がつくと、月詠の中はさっきに比べてさほどキツクなくなっていた。

身勝手な俺の行動に、月詠は必死で力を抜いて、答えようとしてくれているらしい。

すべりの良くなったそこに、俺は自分を打ちつける。

頭の中が弾けて、体中がぶるり、と震えると同時に、俺は熱いものを吐き出した。



「・・・。」



はあ、と息を吐く。

だが俺自身は、まだ吐きたりない、と言わんばかりに硬さを保っていた。



まだ、出したりねぇのか。

先程出した俺の欲が、月詠の中に入りきれなくて足を伝う。



これは俺のオタマジャクシなんかじゃなくて、俺の中のドロドロモンじゃねぇのかな。

俺の中にある、汚ねぇ何かを、俺は月詠の中に吐き出しちまっただけじゃねぇのかな。



ずっと咥えていた耳をいい加減に開放し、月詠の肩口に顔をうずめる。

す、と温かい手が髪を撫でてきた。

「銀時・・・。」



何も言うな。怒られたって仕方ねぇ。

俺は、お前を汚しただけなんだから。

でも嫌われるのは嫌だなぁなんて勝手な事思っていたら、予想もしない台詞が聞こえてきた。



「・・・体、大丈夫か?」

「・・・は?」



想定外の台詞に、思わず俺は間抜けな声をあげた。



「何言ってんだ・・お前は。」

「だって・・この前まで入院しておったのだから、その、体は、大丈夫・・かと。」

「お前・・・は。」



たまらず、俺は顔をあげた。

そこには、不安げな月詠の顔がある。



何て顔してやがる。

こいつ、俺の事怒るどころか人の心配してやがる。



はぁ、と息を吐いて、俺は再び肩口に顔をうずめた。

もう、これ以上顔を合わせるなんて、あまりにこいつに済まなくて、出来そうにない。



「オメーは、バカ、かよ。」

「・・・すまぬ。」



わっちは、他に、やり方がわからぬ。

繋がったままのそこを押し付けるように、月詠がぐい、と体を押し付けてきた。



「ぬしが、その、まだ足りないなら・・・。もっと奥まで・・・来て、くれなんし。」



わっちは全部、受け止めるから。

最後の方は、ほとんど呟きに近かった。



耳を刺激するかすれた甘い声と、柔らかな体の感触が、俺の体中を刺激した。

先程熱を放ったばかりのそこが、再び暴れんばかりに熱くなる。

どうしようも無い衝動のまま、月詠の体ごと抱えんばかりに、突き上げた。

突き上げる度に、ん、ん、と小さくかすれるような声が聞こえる。



その声で、俺の名を呼んで欲しい。

泣きたいくらい、名を呼んで欲しい。

白夜叉じゃなく、俺の名を。



「・・・銀・・・時・・・銀時。」



その声に応える様に、俺は腰を動かす。



今度は、汚ねぇモンだけじゃなくて、もうちっとマシなモン出すから。

欲にまみれきってても、少しは愛情って呼べるモン、出すから。

だからもう一度、受け止めてくれねぇか?



勝手な言い分だって分かってる。

何も見せない癖に、何も言わない癖に、それでも受け止めてほしいなんて我侭だって、分かってる。

でもやっぱり、コイツじゃないと、駄目なんだ。





我侭だって分かってても、俺の事を愛して欲しい。

奥まで、もっと奥まで。

こんな形でしか見せる事が出来ない、俺の奥底の「あいつ」まで。





月詠の背に腕を回して、俺の方に体を寄せる。

きゅ、と体を抱き寄せると、腕と足が絡んで来た。







「・・・銀・・・。」







その声を飲み込むように俺はその唇を塞ぐ。

流れ込んでくる熱い息が俺を満たしてくれる気がして。



俺はそのまま大きく息を吸った。

















◎ついったーで出た御題、「もっと愛して、奥まで愛して/どうしても言えない/裏通りに連れ込んで」に沿って書いたSSです。
御題を強奪させて頂いたM様、ありがとうございます。やっぱり裏になりました(笑)


タイトルの「私を〜」は一人称が私ですが、心情的には銀さんの方デス
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ