長編1
□きみがペット?1章
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目を覚ますと、頭がガンガンと金槌でたたかれたように痛んだ。
見覚えのある天井。
ああ、何時の間に家に帰ったんだろ、月詠は思った。
下を見下ろす。
服を着たまま寝てしまったらしい。
皺が残っては・・と月詠は慌てて部屋着に着替えた。
時計を見ると、7時前。
急いで支度しないと・・と思い、今日は仕事が休みだったと気がついた。
とりあえずシャワーを浴びようと寝室を出る。
隣のリビング兼ダイニングに入ると、あちこちにビール缶やつまみの袋が散乱していた。
どうやら家に帰ってからも飲んだらしい。
全然記憶がない・・・。やはり酒など飲むのではなかった、と月詠は激しく後悔した。
散乱したゴミを拾おうとして、月詠は気づいた。
部屋の端に、何かが転がっている。
否、何か、ではない。
誰か、だ。
背中を向けて寝ころんでいる人物は、おそらく自分のものであろう、見覚えのある毛布にくるまり、すやすやと静かな寝息を立てている。
何故、見知らぬ人間が自分の家に・・・。
しかも、どう見ても、男だ。
そっと、玄関の方に回る。
いつでも外へ出られるよう鍵を開けると、月詠は「あの・・・」と声をかけた。
う・・・ん、と声がして、男が起き上った。
それは若い男。銀色のくせ毛が何となくどこかで見た事がある・・と月詠は思った。
月詠の姿に気づいた青年が寝ぼけ眼のまま、笑って片手をあげる。
「あ・・・おはよう、月詠ちゃん。」
「何故・・・わっちの・・名を????」
「え・・・?何でって??」
銀色の髪をした青年は、ニヤリ、と笑うと言った。
「昨日から、俺、お前のペットだから。」
宜しくご主人さま。
ニヤリと笑う青年の顔を見て、ああ、この男の髪はギンと同じ色だ、と月詠は考えた。