3Z&パラレル

□つめたい夜に
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ギシギシ、と窓枠がきしむ音に月詠は目を覚ました。どうやら書き物をしながらうとうとしていたらしい。手に持っていた筆は白い紙に謎の文字を残している。

窓の外からはヒューヒューという風の音がする。今日は昼間から大きな嵐が来ていて、それでは客足も望めるわけがなく、どの店も早々に店仕舞いしていた。
少しだけ窓を開けて外の様子を見る。雨は止んでいるようだが風が強く、外に人の気配はない。


こんな日は意外と事件が起こりやすい。月詠は筆を片付けると自室を出た。階段を降りるとそこに百華の詰め所がある。
「見回りに行く」と部下に告げると、月詠は扉を開け、外へ出た。



やはり外は雨が止み、強い風だけが吹いている。こういう日は吉原から逃げようとする輩が火をつける事がある。
この強風では、万が一火がつけばこの街は一気に火の海になりかねない。そうすればこの街だけでなく、外の街にまで被害が及び多くの犠牲者が出る。
過去何度もあった惨事を教訓に、月詠はつめたい風にぶるり、と身を震わせ街を歩いた。



いつもならまだ煌々と明かりがつき、多くの客が男を求めて歩くこの街も、さすがに今日は静まり返っている。
それでも鋭く目を光らせながら、月詠は人影の途絶えた街を見回る。
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