長編2
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「月詠さんは・・旦那とどうやって知り合ったんですか?」
「え????」
いきなりの質問に、月詠さんは顔を赤くした。
「あ、ごめんなさい。不躾な質問でしたね。」
「いや・・あの、その。」
モゴモゴ言いながら、月詠さんは更に顔を赤くする。
うわ、こんなに照れるなんて、意外だ。
吉原の人だから、男女の仲なんて、なんて事なさそうなのに。
「す、すいません、旦那の彼女さんなんて、この前初めて聞いたもので。
ついつい、気になっちゃって・・」
「いや・・ちょっと銀時には助けてもらった事があって・・な。それで色々・・」
それだけ言うと、月詠さんは反対側を向いてキセルを吸った。
真っ白なうなじが、赤く染まっているのが目の前に見えて、かえって僕はドキドキしてしまう。
い、いけない、何言ってるんだろ、僕は。
「いや、本当、すいません。ごめんなさい。」
「そんなに謝らなくても良いから・・。
わっちは気にしておらぬ故。」
今度は困ったように月詠さんは言う。
この人、本当は、凄くいい人なんだ。
「そ、それではわっちは団子も頂いたし、これで失礼するでありんす。
とても美味い団子であった。」
そう言うと、月詠さんは店員を呼んでお持ち帰り分を注文した。
多分、旦那へのお土産なんだろうな。
代金を払うと、月詠さんは立ち上がった。
「では、また。」
もとのクールな顔に戻ると、月詠さんは歩き出した。
僕はただ、それを黙って見送る事しか出来なかった。
しかし。
彼女が店の角を曲がった直後、車のブレーキ音と、人々の叫び声が聞こえた。