長編2
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近藤さんは、苦笑いしながら僕の隣に座った。
その顔を見ていると、ふと、僕は近藤さんに聞いてみたくなった。
「局長は姐御に振られ続けて、辛くないですか?」
「そりゃ、辛い時もあるさ。」
「じゃあ、何でそこまで姐御の事追いかけるんですか?」
「そりゃあ、お前、愛だよ。愛。」
当然、という顔で近藤さんは言う。
「でも・・そんなに辛いなら、姐御の事忘れてしまって、他の人を好きになった方が良いと・・思いませんか?」
「??」
「好きな人の事忘れても・・辛い記憶がなくなるなら、それの方が幸せだって思いませんか?」
「ザキ?お前・・」
「あ、僕の事じゃないですよ。友達の友達に相談されて・・・」
訳の分からない言い訳だったけど、近藤さんはアッサリと信じたらしい。
うーんと考え込んだ後、答えてくれた。
「ザキ、幸せって・・なんだろうな。」
「幸せ・・・ですか。」
「人によって違うんだろうが・・俺は、辛くても、苦しくても、愛する人を忘れる方が辛いと思うぞ。
そりゃ、辛い記憶なんて、なくなりゃ良いと思う事もあるさ。
でも、辛い事は・・辛いだけか?」
「?どういう事です??」
「俺はなぁ・・お妙さんに振られ続けて辛い時もあるが、その代わり、沢山嬉しい事も沢山あった。
辛いだけなら、きっとこの気持ちは続かない。
辛くても、お妙さんと会えた幸せは、ココにあるんだ。」
そう言って、胸に手を当てた。
「お妙さんの事だけじゃない。
真選組の事も・・それ以外のあらゆる事も・・
辛い事も楽しい事も、全部セットなんだと思う。
そうじゃないか?ザキ。」
「局長・・」
「お前も真選組の一員なら、辛い事もあったろうが。」
「は・・ハイ。」
「なら、真選組の事忘れて、違う人生送りたいと思うか?」
「いえ・・」
「だろ?辛くても、苦しくても、それだけじゃ無いんだよ。きっと」
「ハイ!!」
分かったような、分からないような話だけど、僕は感動した。
思わず立ち上がり、近藤さんに向かって頭を下げた。
「ありがとうございました!!!」
「オウ、俺くらいのレベルになれば、この位、当然だ。
お前も俺を見習って愛の伝道師として・・ってオイ!ザキ!??」
僕は急いで駆け出した。
そうだよ。
僕は知ってたはずだ。
月詠さんは、旦那を見ている時、一番幸せそうな顔をしている事。
旦那と話をしている時が、一番綺麗な顔をしている事。
無表情に見えて、旦那を見ている時は、とても目が優しくなっている事。
旦那も、月詠さんも気付いてないかもしれないけど、僕は知ってたんだ。
だから・・
どうしたら良いかは分からないけど・・。
とにかく僕は病院へ向かって走っていた。