長編2

□オマケ
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月詠は着物を羽織ると、キセルを口にくわえた。

そして、一息吐くと、しみじみ言った。


「このキセル・・・」

「それがどうした?」

「これのおかげで、ぬしを忘れずにすんだのかも、な。」

そのキセルは、汚したキセルの代わりに俺が買ったもの。

なんだかんだ言いつつ、月詠はそれをずっと愛用してくれていた。

記憶を失っていた間は一服もしなかったのだが・・・。

「記憶を失っていた間・・一服したいという気は何故か起こらなかったのに、このキセルは何故か手放せ無くてな。」

そう言って、少し笑う。

「・・・」

何でこういう嬉しい事をサラリと言うかね、この女は。

俺が密かに感動していると、月詠はいきなり爆弾を落としてきた。

「そうだ、今度地上に行く時は山崎殿にも礼に行かねばな。バドミントンとやらを教えてもらう約束もあるし。」

ブホッッ

思わず俺は噴出しそうになる。

「な、何で・・・」

「何でって・・約束したし。」

俺の気を知ってか知らずか、涼しい顔でコイツは言う。

オイ、これわざとだったら、相当悪女だぞ。


しかし、山崎の野郎には驚いた。

あいつ、月詠に気があったとは。

まあ、9位のあいつに1位のオレ様が負ける訳ないけどね。

そう思いつつ、今度からはアイツもチェック対象だな、と密かに思う。


「しかし、友人が増える言うのも・・楽しいな。」

月詠は続けて言った。

含みの感じられないその表情に、やっぱりコイツは全然気付いてねぇ、と俺は思う。

この女は、エロネタOKのクセに、自分の恋愛関係に関しては壊滅的に鈍い。

俺も相当苦労させられたが、今回はそれに助けられた、という事かな。

「銀時。何で怒っておる?」

相当俺の面に不機嫌が現れていたらしい。
月詠が不思議そうに言った。

「・・何でも無い。」

山崎ごときにヤキモチなんて、恥ずかしくて言えるか。

俺は答える代わりに布団から這い出て、月詠の体を抱きしめた。

しなやかで柔らかい体を抱きしめると、月詠が体を預けてくる。

今度山崎に会ったらマジでシメねぇとな。
そう思いながら、俺は肌の感触と月詠の香りを堪能した。



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