銀月(後)2

□ハロウィンって何のイベント?ぶっちゃけ俺しらねぇ。
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10月31日。

「じゃ、銀ちゃん言ってくるアル。」

神楽を送り出すと、銀時は早速着替えをした。

いつもの着流しでは吉原では目立つ。
困った事に銀時の銀髪は更に目立つ。

百華どころか、そこら辺の遊女に見つかっても、すぐに月詠に報告が行きそうだ。

どうせなら、バレずにコッソリ行った方が面白い。

そこで・・・

「おお、あった。」

押入れをゴソゴソしながら、目当ての物を探し当てた。


********


「のぉ・・・日輪。いい加減、コレ、終わりにしても良いか?」

「ダメよ。今日は一晩それ。これも吉原の営業活動の一環なんだから。協力しなさい。」

吉原の為と言われると、断れないのが哀しいところ。

「・・・早く明日になってくれ。」

月詠は、うんざりという顔で言った。



本日、吉原は町を挙げての「ハロウィンイベント」

町中に謎のカボチャお化けが飾られ、
”ハロウィン特別割引”の看板があちこちの店に立てられている。
客や女達の多くが、ちょっとした仮装をしている。

別に意味など無いのだろうが、
「世間のイベントにかこつけて、お客を呼ぶのは商店街の基本でしょ♪」と日輪が提案した。

それはそれで効果があったらしく、今日の吉原は普段の週末より客足が多く、にぎわっている。

これはこれで、町の繁栄に繋がる事で良いと思う。

”これ”さえ無ければ・・・。

”これ”のおかげでせっかくの銀時の誘いも断った。
確かに今日は吉原挙げてのイベントゆえ、いつもより忙しくはある。
しかし、銀時も吉原に呼び、一緒に楽しむ・・という手もあったのだ。
だが、これでは・・・。

絶対にアイツに見せるわけにはいかない。

月詠は小さくため息をついた。


そこへ部下が近づいた。

「・・・頭、怪しげな者を発見したとの報告が。」

「何処にじゃ。」

「今、地上からの入口を降りてきたと。挙動が怪しい上に、動きが素人ではなさそう、との事です。」

「分かった。すぐ行く。」

月詠はそう言うと、茶屋を静かに出て行った。

********

屋根の上や路地を目立たないように駆けつつ、月詠は町を駆け抜けた。

「頭、怪しい者は、黒いマントをすっぽり被っています。」

「ハロウィンの仮装か?」

「多分・・ただ、その者の動きが怪しいので・・・」

「分かった。わっちが様子を見てみる。先程、向こうで喧嘩騒ぎがあったようじゃ。大人数での喧嘩ゆえ、人手が足りぬ。ぬしらはあちらの方を頼む。」

「頭1人では危険では・・」

「大丈夫、様子見だけにする。」

「分かりました。」

部下を行かせると、月詠はその怪しい人物とやらを探した。

高い所から見渡して・・・。

いた。

黒いマントを頭から被った男。
おかげでその姿は良く分からない。

マントの男は、なにやら他の男と話をしているようだった。

そのまま見ていると、マントの男が相手の男の襟首を掴み、殴りつけるのが見えた。

「強盗か!?」

そう思い、月詠は下へ飛び降りる。
そして、マントの男へ向かってクナイを投げつけた。

マントの男は、寸での所でクナイを避けた。
できる、この男。

「この吉原で強盗など、百華が許さぬ!覚悟しなんし!」

そう言って短刀を握り、マントの男に飛びかかった。その時。



「・・・ちょ、ちょっと、タンマ!!!」

あれ?この声・・・

「俺だっつーの!」

「銀時!?」

フードの隙間から見えた顔は・・
銀時その人。

「何故ぬしがこんな所で喧嘩など・・・」

「月詠様!」

振り向くと、遊女が1人。
建物の陰に隠れていて気がつかなかった。

「そのマントの方・・そこの男に絡まれてる所を助けてくれただけなんですけど・・」

「え?」

「・・・そういう事。」

憮然とした顔で、銀時が答えた。
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