銀月(後)2
□ハロウィンって何のイベント?ぶっちゃけ俺しらねぇ。
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10月31日。
「じゃ、銀ちゃん言ってくるアル。」
神楽を送り出すと、銀時は早速着替えをした。
いつもの着流しでは吉原では目立つ。
困った事に銀時の銀髪は更に目立つ。
百華どころか、そこら辺の遊女に見つかっても、すぐに月詠に報告が行きそうだ。
どうせなら、バレずにコッソリ行った方が面白い。
そこで・・・
「おお、あった。」
押入れをゴソゴソしながら、目当ての物を探し当てた。
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「のぉ・・・日輪。いい加減、コレ、終わりにしても良いか?」
「ダメよ。今日は一晩それ。これも吉原の営業活動の一環なんだから。協力しなさい。」
吉原の為と言われると、断れないのが哀しいところ。
「・・・早く明日になってくれ。」
月詠は、うんざりという顔で言った。
本日、吉原は町を挙げての「ハロウィンイベント」
町中に謎のカボチャお化けが飾られ、
”ハロウィン特別割引”の看板があちこちの店に立てられている。
客や女達の多くが、ちょっとした仮装をしている。
別に意味など無いのだろうが、
「世間のイベントにかこつけて、お客を呼ぶのは商店街の基本でしょ♪」と日輪が提案した。
それはそれで効果があったらしく、今日の吉原は普段の週末より客足が多く、にぎわっている。
これはこれで、町の繁栄に繋がる事で良いと思う。
”これ”さえ無ければ・・・。
”これ”のおかげでせっかくの銀時の誘いも断った。
確かに今日は吉原挙げてのイベントゆえ、いつもより忙しくはある。
しかし、銀時も吉原に呼び、一緒に楽しむ・・という手もあったのだ。
だが、これでは・・・。
絶対にアイツに見せるわけにはいかない。
月詠は小さくため息をついた。
そこへ部下が近づいた。
「・・・頭、怪しげな者を発見したとの報告が。」
「何処にじゃ。」
「今、地上からの入口を降りてきたと。挙動が怪しい上に、動きが素人ではなさそう、との事です。」
「分かった。すぐ行く。」
月詠はそう言うと、茶屋を静かに出て行った。
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屋根の上や路地を目立たないように駆けつつ、月詠は町を駆け抜けた。
「頭、怪しい者は、黒いマントをすっぽり被っています。」
「ハロウィンの仮装か?」
「多分・・ただ、その者の動きが怪しいので・・・」
「分かった。わっちが様子を見てみる。先程、向こうで喧嘩騒ぎがあったようじゃ。大人数での喧嘩ゆえ、人手が足りぬ。ぬしらはあちらの方を頼む。」
「頭1人では危険では・・」
「大丈夫、様子見だけにする。」
「分かりました。」
部下を行かせると、月詠はその怪しい人物とやらを探した。
高い所から見渡して・・・。
いた。
黒いマントを頭から被った男。
おかげでその姿は良く分からない。
マントの男は、なにやら他の男と話をしているようだった。
そのまま見ていると、マントの男が相手の男の襟首を掴み、殴りつけるのが見えた。
「強盗か!?」
そう思い、月詠は下へ飛び降りる。
そして、マントの男へ向かってクナイを投げつけた。
マントの男は、寸での所でクナイを避けた。
できる、この男。
「この吉原で強盗など、百華が許さぬ!覚悟しなんし!」
そう言って短刀を握り、マントの男に飛びかかった。その時。
「・・・ちょ、ちょっと、タンマ!!!」
あれ?この声・・・
「俺だっつーの!」
「銀時!?」
フードの隙間から見えた顔は・・
銀時その人。
「何故ぬしがこんな所で喧嘩など・・・」
「月詠様!」
振り向くと、遊女が1人。
建物の陰に隠れていて気がつかなかった。
「そのマントの方・・そこの男に絡まれてる所を助けてくれただけなんですけど・・」
「え?」
「・・・そういう事。」
憮然とした顔で、銀時が答えた。