長編2
□かぐや姫 1
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それは、地雷亜との戦いが終わった直後の事だった。
銀時と月詠は、楼閣の最上階から吉原の街を見渡していた。
「・・・戻るか。」
「ああ・・・」
月詠は言葉少なめであった。
あんな事があった後だ。仕方ない。銀時はそう思った。
「じゃ、行くぞ。」
とにかく、日輪達の下へ戻ろう。
そう言って月詠を誘って歩き出した時、疲労と緊張がピークに達していた月詠が、ふらりと体を傾かせた。
銀時が、とっさにその腕を掴む。
しかし、銀時も相当ダメージを受けていたらしい。一緒にバランスを崩した。
銀時は、目の前に見えた欄干を掴んだ。
だが・・・
戦いの最中に何か当たっていたのであろうか、その欄干はあっさりと崩れた。
銀時と月詠の体が更に傾く。
二人の体は、そのまま宙に放り出される形になった。
眼下にあるのは・・・
高い楼閣から見える、吉原の街。
はるか下にある、屋根瓦。
自分が落ちていく感覚。
反転する視界。
おい、この高さから落ちたらやべぇだろ、
どうにかしないと・・・。
銀時の記憶は、そこで途切れた。
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かぐや姫の迷宮
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次に目を覚ましたのは、何処かの路地。
「あれ?」
銀時は思った。
かなりの高さから落ちたと思ったが・・
体が痛くない。
周りを見渡す。
月詠はおろか、崩れたはずの建物の破片も見つからない。
どういう事だ?上を見上げた。
そこで気付いた。
先ほどまでの火事が・・消えている。
消えている、というのは正確ではない。
火事が起きた形跡が全く見当たらない。
あの炎は、吉原のほぼ全域に行き渡っていた。
炎どころか、煙の臭いすらしない。
一体・・・此処は何処だ?
銀時が呆然として立っていると、
「こら、待てガキ!」
男の叫び声と、助けて、という子供の声がした。