長編2
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「・・・こんな事をして何になる。」
炎の中。
ふらつく頭を押さえながら、月詠は言った。
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茜の入れてくれた茶を飲んだ後。なぜか意識が遠くなった。
しかし、何か周りが騒がしい・・そう思って目を覚ますと。
周りには煙が。
下に降りようと廊下へ出ようとしたら、既に一階は炎に包まれていた。
「無駄だよ、月詠。」
「ぬしは・・・」
振り向くと、そこにはストーカーをしていた男が立っている。
「僕と一緒になってくれないのなら。一緒に死のう。あの世で幸せになろう。」
「寝言を言うで無い。わっちはまだ死ぬ気はない。」
ここで自分が死ねば、日輪は、茜は、どうなる。
自分には死など許されてはいない。
生きて戦う事を日輪は教えてくれた。
ならば、自分は生きなければならない。
「どんなに言っても無駄だよ。もう、炎が回ってきている。此処で僕と一緒に死ぬんだ。」
男が笑った。
く・・・。
振り向くと、廊下に炎が広がっている。
もう逃げられないのか。
大事な人達の顔が頭に浮かぶ。
日輪・・茜・・・。
そして。
「銀時・・・」
口から名がこぼれた。