長編2
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「いや・・ちょっと話あんだけど。」
構わぬ、と月詠は言う。
そのまま銀時は中に入り、月詠と一緒に街を眺めた。
「なあ・・・月詠。」
「なんじゃ?」
「お前は・・前に言ってたろ。声がするって。」
「ああ。」
「その声はな。多分、お前を待ってる人の声だよ。」
おそらく、日輪の。晴太の。百華の女達の。
月詠の大事な仲間達の声。
「此処はぬるま湯に浸かってるみてぇで、俺も気持ち良かったよ。だけどな。あんまり浸かってるとのぼせるぜ。」
「・・・何を言ってるか、わからぬ。」
眉間にしわを寄せて、月詠が言う。
「俺がこんな事言う資格なんて、ねぇかもしれねぇけど。」
銀時は街を見ながら月詠に話した。
此処が夢の世界である事。
夢から覚めないと、現実の月詠が危険である事。
そんな月詠を心配しているであろう、仲間が待っている事。
「お前はな・・・
ちょっとばかし、辛い事があったんだ。あっちで。
だから、此処の夢が気持ち良いのかもしれねぇ。
だけどな・・あっちには、お前の大事なモンが沢山あるんだよ。
お前が、命を賭けて護っているモンが。」
「・・・訳が分からぬ。」
月詠は言った。
その声が小さく震えている事に、銀時は気付いた。
「お前・・思い出したのか?」
問う銀時に、月詠は首を振った。