長編2

□6
4ページ/4ページ

口づけに溺れながら、銀時は頭の隅で冷静に考えていた。

もしかしたら俺がこの夢に囚われている理由は、これなのかもしれない。

この世界では、月詠を手に入れる事が出来る。身も心も。

甘い誘惑が、心を捉えそうになる。

だけど・・・此処で負けちゃ、男じゃねぇよな。



惜しむ気持ちで唇を離すと、はぁ、という吐息が月詠から漏れた。

「続きは・・目が覚めてから、だな。」

我ながら息が上がっているのが情けないな、と思いながら、どうにか笑い顔を作って銀時は言った。

月詠は、そんな銀時の顔をまじまじと見て言った。

「銀時・・本当に、傍にいてくれるのか?」

銀時が頷くが、月詠はやはり不安げな表情をする。

「”あちらの”わっちも・・ぬしは慕うてくれるのか?」

「あったりめーだ。」

傷があっても無くても。

どんな運命を辿っていても。

”あっちの”月詠が、こっちの月詠みたいに俺を好きだと言ってくれるか、分からないが・・・。



月詠は月詠だ。



「かぐや姫と逆だな。」

「?」

「かぐや姫は地上から月に帰るんだがな。お前は、月にある夢の世界から、地上に帰るんだよ。」



俺と一緒にな。




笑って言う銀時の顔を、月詠は潤んだ瞳で見つめていたが、ふっと笑うと言った。

「銀時・・お前に会えて、良かった。」

「月詠・・・」

「銀時・・何故吉原の夢を見たのか、わかったぞ。」

??

不思議そうな顔をする銀時に、月詠は言った。

「此処におれば・・・ぬしに会えるからじゃ。」

地上は広すぎて、ぬしを探せぬ。

視界が白く光って、最後の言葉を言った時の月詠の表情を、銀時は見る事が出来なかった。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ