長編2
□7(完)
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「・・で、お前も覚えてないの?」
退院の日。
疲労と衰弱が激しい為、未だ退院できない月詠を、銀時は訪ねた。
月詠も銀時と同じ時に目覚めたのだが、やはり夢の記憶が無いらしい。
「・・・分からぬ。起きた時は何か覚えていたと思うのだが・・」
「俺と一緒かよ。・・・ったく、わからねぇと逆に気になるな。」
「そうだな。」
だが、悪い夢ではなかったのだろう。
二人して捕まるくらいなのだから。
月詠は笑った。
その笑顔が少し寂しそうに見えたのは気のせいだろうか。
俺が・・・
何か月詠に言いたい事があったんだけど。
そう思ったのだが、それ以上、言葉が出てこなかった。
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月詠が退院してしばらくしてから、新八・神楽と吉原を訪れた。
月詠の怪我はどうやら大丈夫のようだが、精神面のダメージが酷いらしい。
新八と神楽が励ましに行くと騒いでいるので、一人逃げようとしたのだが、日輪のゴリ押しで結局一緒に行く羽目になった。
やれやれ、と思っていると、足元に猫が一匹やってきた。
「この猫、野良なんだけど最近此処に住みついてね。
月詠が時々ご飯あげてたら、なついちゃったの。」
勝手に茜って名前付けてるの、と日輪は言った。
茜と呼ばれた猫が、銀時の足元へ寄って来て顔をこすりつけた。
「あら、茜が自分から人になつくなんて。」
珍しいわね。結構人見知りなのに。
日輪が小首を傾げた。