長編2
□101年 1
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「・・・何ですか、長谷川さん。これ」
「ああ、これ?俺、実は小説家に転向しようと思って。で、俺の処女作を皆に見て批評してもらいたいんだ。」
原稿用紙から顔をあげた新八に対して、長谷川が自慢げに答えた。
その顔を冷ややかに眺めながら、神楽が言う。
「まともな職に就けないから、小説家目指すなんて、まさに人生の失敗ルートを真っ直ぐ進んでるアルな。」
「酷いよ、お嬢ちゃん。良いかい?良い小説を書くには、人生経験も大事なんだよ。だから・・」
「別に聞かなくても良いアル。私は人生の成功者になるアルね。敗者の話には用はないネ。」
ほじっていた鼻クソを長谷川に向かって投げつける。髪の毛にそれを付けられた長谷川は、ブツブツ言いながら、それを取った。
「で・・でも、この話結構面白いですよ。凄いじゃないですか。意外と才能あるのかも。」
新八の言葉に、そう?と長谷川が一転、嬉しそうな顔になる。
ソファにふん反り返りながら、またまた自慢げに言った。
「実はこの話、昔俺がじいちゃんに聞いた昔話がモチーフなんだよね。」
「へえ・・そうなんですか。で、この続きはどうなるんです?」
う、と長谷川が言葉に詰まる。
「実はその続きを覚えてなくてなぁ・・今から考える所なんだ。」
「何だ、やっぱり自分で考えた話じゃないアルね。所詮、自分の力では何もできないアル。」
ぐぉぉぉぉ!!と叫ぶ長谷川に、
「で・・・でも、続き出来たら見せてくださいね。」
新八が言った。
「新八君、ありがとぉぉぉぉ!!」
新八の手を握る長谷川が、ふと気づいて言った。
「そう言えば銀さんは?」
「ああ、ちょっと用事で出かけてます。」
「ふうん、じゃ銀さんにはまた今度見せに来るな。」
長谷川は言うと、万事屋を出て行った。