長編2
□101年 1
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その頃。銀時は、ひのやを訪ね、月詠の部屋の前に来ていた。
日輪と共に、部屋の前に立ち、部屋の主に向かって声をかける。
「月詠、銀さん来たわよ。」
「オイ、どうしたコラ??その年で引きこもりたぁどういうこった?今頃反抗期か??」
「・・わっちは大丈夫じゃ。少し一人にしておいてくれ。」
中からは、沈んだ声が聞こえた。
『月詠がおかしいの』
日輪から電話が来たのは、今朝の事。
話の内容はこうだった。
昨日の朝から、月詠が一向に部屋から出て来ようとしない。
部屋から出るのは、人が見ていない隙にコッソリトイレに出るくらい、日輪や晴太がいくら呼んでも、「少し一人にしてくれ」と言って話をしない。
せめて食事を取ってくれ、と部屋の前に置いていれば、しばらくした後に空になった盆が部屋の前に出されていた。
とりあえず一日様子は見たが、次の日になっても様子は変わらず。
「病気とか怪我でもないって言うし・・百華の仕事も今日は休むって・・どうしたらいいのか、私も分からなくて。」
なら、恋人である銀時になら話をするだろう、という事で連絡が来た。
だが。
「銀時は呼ぶなと言ったろうに。」
月詠の声が聞こえる。
「そんな事言っても・・・月詠が何も話してくれないからでしょ。」
いい加減にイライラした様子で、日輪が答えた。
何もかも抱え込む性格の月詠ではあるが、必要以上に人に気を使う人間でもある。
多少の悩みを表に出す事はないし、他の者に余計な心配をさせる事もしない。
それなのに、この状況は何だ・・・?
思わず銀時と日輪は顔を見合わせた。