長編2

□101年 1
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深刻な話ならば無理に聞きだすのも・・とも思うが、このままではらちがあかない。

「んじゃ何か?俺にも日輪にも言えねぇ事があるってか?」

銀時の声に、返事はない。

「オイ、いい加減にしないと、この襖ブチ破るぞ、コラ。」

さすがに銀時も業を煮やした。

襖で仕切られた部屋は、中から何かつっかえ棒でもしているのであろうか。

容易には開かなくされていた。



だが、たかが襖一枚、銀時に破る事はたやすい事。

洞爺湖を銀時が構えた時、中から人が動く気配がした。



「銀時・・・だけなら・・・入っても、良い。」


そしてコトリと、何かを外す音がした。



日輪の頷く顔を確認して、銀時がそっと襖を開ける。

中に入ると、「襖を閉めてくれ」との声が聞こえるので、そっと襖を閉めた。


窓を閉め切り、明りもつけていない部屋は薄暗い。

部屋の真ん中には、敷かれたままの布団があり。

布団の膨らみ具合から、どうやら月詠が中にもぐっているらしい。

いつもなら、あり得ない。

例え病で伏せっていても、来客があれば起き上って布団の上に正座するような女だ。



「どうしたんだ?」

銀時が出来るだけ優しく、声をかける。

「・・・」

どう考えても、おかしい。

いつもの態度とは、違う。

「誰かになんか・・されたのか??」

「・・・」

それでも返事はなく。


月詠は、百華として長く戦ってきた女だ。

多少の怪我程度でショックを受ける女ではないし、仕事を休むくらいの怪我なら隠す事もない。

日輪にも銀時にも言えないとなると・・考えたくはないが・・。


まさか・・・・。


銀時の顔から、血の気が引いた。
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