銀月(後)2
□人生にマニュアルなんてない。
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今日は仕事も休み。
だがする事もなく、ぼんやり自室で本を読んでいた。
「あら?新婚さん、いらっしゃい♪」
ひのやの店先で、日輪が言うのが聞こえる。
「え?月詠??部屋にいるわよ。どうぞ上がって。」
自分に?
月詠が立ち上がろうとした時、ガラリと襖が開いた。
「邪魔するぜ」
「ぎ・・銀時?」
「あ・・の・・なぁ・・」
全速力で駆けてきたのであろうか・・
息も絶え絶えの銀時の姿を見て一瞬戸惑った月詠だが、キッと表情を変えると、冷たく言い放った。
「新婚の男がこんな所に来るでない。女房を泣かすなと書いておったろうに。」
「・・・だ・・か・・ら・・あ、ダメ、息切れすぎ。」
「ただの運動不足じゃ。」
「・・そうだよね、ちょっと最近忙しくて運動する暇もなく・・・ってそうじゃねぇぇ!!」
「おや、元気になったではないか?さっさと新婚家庭に帰るが良い。」
「だーかーら!!お前、あれをマジに受け取るなぁぁぁ!ボケか?マジか??マジなのか???」
「何?」
月詠は眉間に皺を寄せた。
「だから、あれは偽装年賀状だって!どう見ても不自然だろ、あれ!」
「・・・あれが嘘だと言うのか?そんな事をする人間が、この世におる訳なかろう。」
「いるんだよ!最低でもこの世に二人!」
「本当・・か?」
「つーか、あれ本気にしたの多分、お前と晴太だけだぞ、あれ。」
「・・・」
良く考えたら。。。確かに不自然ではあった。しかし、頭に血がのぼって、それどころではなかったような・・・
「あ!では日輪はわかっておったのか?」
「あいつが気づかねぇはずがないだろーが」
「・・・日輪め!!」
部屋を出ようとした月詠に、銀時が言った。
「日輪なら、ちょっと買い物に行くって出かけたぞ。」
「・・逃げたな!」
しまった。日輪にまでからかわれていたとは・・・
この数日の、自分の悩みは何だったのか。
悔しくて、恥ずかしくて、顔から火が出そうだ。
すると、後ろから腕が伸びてきて、体を包んだ。
「・・・で、お前、それで元気なくしてたんだ。」