銀月(後)2

□人生にマニュアルなんてない。
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「・・・元気など、なくしておらぬ。」

「嘘つけ。ちゃんと読めたぞ、あれ。」

「・・・」

赤くなって黙ってしまった月詠を見て、やけに嬉しそうに銀時が顔を摺り寄せてきた。

ふん、と顔を背ける月詠に、怒ってるのか?と銀時が問いかける。

「・・当たり前じゃ。」

「俺のせいじゃないって。」

「さっさと連絡をよこさぬからじゃ。」

「・・すいません。年賀状見るのが億劫で、放っておいてました。」

「許さぬ。」

「許して下さいよぉ。月詠様。」

言いながらも銀時は笑っている。

「お詫びの印に、何でもお願い聞いてあげますから。金はないから、その辺りはヨロシク」

「お願いなど・・」

ない、と言いかけた時、先ほど読んだ本の一文が頭をよぎった。



『たまには甘えてみましょう。』




「・・・なら、茶と甘いものが、欲しい。」

「ハイハイ。」

銀時は下へ降りていくと、茶と団子を運んできた。

「・・・肩をもめ。」

「ホイホイ。」

茶を飲む月詠の後ろに回ると、銀時が肩をもみ始めた。

「で、次は?」

「次・・・」

思い浮かばない。

後ろで銀時が笑っているのが分かる。

自分が人にお願いする事自体苦手なのが、分かっているらしい。

「なーいーのーかーね?」

「・・・」

このままなのも悔しい。

姐様達が甘える時はどうしていたっけ・・?

月詠は思い出し。

後ろを振り向いた。

「思いついたか?」

「・・・あ・・あの。」

言おうか、どうしようか。

しかし、かなり恥ずかしい。

だが・・・

この男を他所の女に取られたと思った時、本当に哀しかった。

表には出さなかったが、ものすごく悩んだ。

もっと愛想良くすべきだったのだろうか。

もっと可愛い女になるべきだったのだろうか。



だから・・少しだけ、努力、してみる。


「・・・膝の上、座っても、よいか?」
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