銀月(前)
□決戦は日曜日(前編)
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「あ〜ん♪さっちゃんありがとう!!本当にヘルプの子、連れて来てくれたのね。しかも超美人じゃない!!」
店長、と紹介された男が、何故か嬉しそうに猿飛の手を握って、振り回していた。
「・・・何だ、これは。」
月詠の問いに、猿飛が振り向いて言った。
「そりゃ決まってるでしょ。此処でバイトよ。」
「何でわっちが!?」
「アンタ半分忍者みたいなモンでしょ?此処はね、くの一しかウエイトレスになれないの。なんだけど、お店の子が続けて病気になっちゃって、今私しかいないのよ。これじゃお店開けないじゃない?だからツッキー、一緒にバイトして頂戴。」
「嫌じゃ。」
月詠は即答した。
「急用だと言うので来てみれば、つまらん。わっちは帰る。」
店を出ようとして月詠を、店長が腕を掴んでひきとめた。
「お願い、月詠ちゃん、せめて3日、今週の日曜までで良いから!今日からすぐ近くの大江戸ドームで大忍者イベントがあるのよ。毎年その間は、このお店も大繁盛するから、店を閉める訳にいかないのぉ!!」
「適当にくの一の恰好をしたおなごを連れてくれば良いじゃろうに。」
「何言ってんのツッキー!!この店はね、『本物のくの一』である事がウリなの。だから適当な女なんか使えないのよ!だからツッキーに来てもらったんじゃない。」
「だからと言って・・・」
「お願いします・・家には女房と子供がいるんです。このお店がつぶれたら・・・」
よよよ、と泣き崩れる店長を前に、月詠はしばらく困った顔をしていたが、
「・・・3日だけじゃ。」
溜息をつきながら、言った。