銀月(前)
□決戦は日曜日(前編)
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翌日。
一度決めた約束は守らねば、という事で月詠は律義にくの一カフェに出勤した。
相変わらず、店は忙しい。
昼を過ぎた頃、明らかに酔っ払っている客が入店して来た。
「何だここは?くの一カフェだと?このご時勢に忍者なんて、何だこりゃ。」
強烈な酒の匂いと、がなりたてる様な大声にに、周りの客が顔をしかめる。
「すいません、他のお客様もいらっしゃるのでお話は少し声を落として頂けますか?」
店長がにこやかに笑いながら対応した。
「何だお前?客に文句つけるのか?」
男は店長に食って掛かり、襟首を掴んだ。
ひぇぇぇぇ、と手をあげる店長を見て、月詠が近づいた。
商売柄、酔っ払いの相手には慣れている。
「すまぬが外へ出て少し頭を冷やさぬか?ここで暴力沙汰を起こしてもつまらなかろう。」
「んあ??なんだこの女?俺に指図する気か?」
男が凄むが、月詠は全く動じる様子が無い。
「オイ、何だ、その顔は!!もっと愛想よくできねぇのか??」
怒った男が月詠の服を掴もうとした。
その手を逆に掴み、月詠が言った。
「これ以上、此処で暴れるなら、容赦は、せぬ。」
迫力に押され、手を掴まれたまま男は動けない。
「な・・何だ、女の癖に。くそ、馬鹿力め・・・!!」
強い力で手首をつかまれ、酒臭い息と唾を吐きながら男は大声でわめく。
多少眉をひそめただけで、それでもひるまない月詠を見て、今度は下品な笑いを浮かべて、男が叫んだ。
「お、何だ?お前その顔の傷。いくら良い女でも、そんなみっともねぇ傷つけてちゃ意味ねぇなぁ。
そんな顔してるから女の癖に可愛くねぇんだ・・・ぐわっっ!!!!!!」
言いかけた男の頭に、ゴン!!と音をたてて何かがぶつかった。