銀月(前)
□決戦は日曜日(前編)
5ページ/5ページ
男はそのまま、口から泡を吹いて倒れた。
月詠が見ると、男に当たったのは食事を運ぶお盆。
そしてそれを投げたのは・・・
「ったく、こんな虫けら、さっさとほっぽり出しちゃえば良いのよ。」
裏で休憩をとっていたはずの猿飛が、睨みつけながら言った。
「別に・・わっち一人でも・・」
「ならさっさと追い出しちゃえば良いのに。ツッキー、モタモタしてんじゃないのよ。こんな奴に好き勝手に喋らせちゃって。」
猿飛は、倒れている男の襟首を掴み、そのまま入り口へと引きずって行った。
「今度、私の友達に失礼な事言ったら、殺すわよ。」
そして、そのまま男を店の外へ蹴飛ばした。
『おお、スゲー!!』
『やるじゃん、姉ちゃん!』
周りの客から、喝采があがる。
当たり前でしょ、フンと言いながら、猿飛はまた休憩すべく、店の奥へ戻った。
・・・もしかして。
月詠は思った。
猿飛は、自分の傷の事をあの酔っ払いが言い出したので、助けてくれたのであろうか?
月詠自身は、傷の事を言われても気にはしていない。
幼少の頃から散々言われてきたし、この傷には意味がある。
酔っ払いの言葉程度で、傷つく事は、ないのだ。
だが、しかし。
自分を気遣ってくれる猿飛の優しさが、少し嬉しかった。
・・・友達、か。
ほんの少しだけ、月詠の顔が、ほころんだ。
→後編へ、続く。