銀月(前)

□決戦は日曜日(前編)
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男はそのまま、口から泡を吹いて倒れた。

月詠が見ると、男に当たったのは食事を運ぶお盆。

そしてそれを投げたのは・・・




「ったく、こんな虫けら、さっさとほっぽり出しちゃえば良いのよ。」




裏で休憩をとっていたはずの猿飛が、睨みつけながら言った。




「別に・・わっち一人でも・・」

「ならさっさと追い出しちゃえば良いのに。ツッキー、モタモタしてんじゃないのよ。こんな奴に好き勝手に喋らせちゃって。」




猿飛は、倒れている男の襟首を掴み、そのまま入り口へと引きずって行った。

「今度、私の友達に失礼な事言ったら、殺すわよ。」

そして、そのまま男を店の外へ蹴飛ばした。




『おお、スゲー!!』

『やるじゃん、姉ちゃん!』

周りの客から、喝采があがる。




当たり前でしょ、フンと言いながら、猿飛はまた休憩すべく、店の奥へ戻った。




・・・もしかして。

月詠は思った。




猿飛は、自分の傷の事をあの酔っ払いが言い出したので、助けてくれたのであろうか?



月詠自身は、傷の事を言われても気にはしていない。

幼少の頃から散々言われてきたし、この傷には意味がある。

酔っ払いの言葉程度で、傷つく事は、ないのだ。

だが、しかし。

自分を気遣ってくれる猿飛の優しさが、少し嬉しかった。




・・・友達、か。




ほんの少しだけ、月詠の顔が、ほころんだ。




→後編へ、続く。
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