長編2

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「一人の青年を、猫と置き換えているんです。」




昔、ある村があった。



そこに一人の娘がいた。

美しいその娘は、山の中に一人で住む青年と恋仲だった。
だが、山の民である青年と村の民である娘の恋は許されるものでなく、二人の仲は周りには秘密であった。


そんなある日、娘が山賊達にさらわれた。

凶暴な山賊達に村人は太刀打ちなど出来ない。皆、娘の不運を嘆いた。

そこへ青年が現れた。

命に代えて娘は助けると。だから、娘との仲を許して欲しいと。

娘の親である村長は、それを承諾した。

かくして青年は山賊と戦い、娘を取り戻した。



村人は喜んだ。青年も娘も、これで晴れて娘と一緒になれると手を取り合って喜んだ。

しかし、山賊を倒し村に平和が訪れた頃、隣の領主から娘を嫁に欲しいとの話が来た。

領主の国は富んでいる。

娘が嫁げば村の繁栄は間違いない。

村長は考えた。

娘を青年に嫁がせるより、領主に嫁がせたいと。



村長と村人は、青年を騙し、薬を盛り、その命を奪った。

青年は何処かへ去ったと教えられ、無理やり嫁がされた娘は、嫁ぎ先で、病気で呆気なくこの世を去った。

それから数年後。

村を大きな災厄が次々と襲った。

大雨が降ったかと思えば、日照りが襲い。

村長は、雷に打たれて炎に包まれた家の中で焼け死んだ。

それでも、村を襲う災厄は続いた。

村人達は、遠くの街で評判の術者を呼び、呪いを解くよう、頼んだ。

術者は、3日3晩、青年の呪いと戦い、山へ追いやり、封じた。

村には、平穏が戻った。





そして長い時が過ぎ。

長い年月の間に青年の呪いは、「化け猫」と言い換えられ、ただの言い伝えとなった。

ある日、山の奥深くへ入った村人が小さな祠を見つけ、誤ってその祠を倒してしまった。

祠に封じられた青年の魂は、再び村を襲い。

そこで村人は初めて、村の言い伝えが本当だったのだと気づいた。





村外れの寺に住む住職は、古い記録から青年の無念を知り、その魂を鎮めようと祈った。

住職は、青年の声を聞いた。

「清き魂は再びこの世に帰ると聞いた。俺は、娘の魂がこの世に戻るまで、消える訳には行かない。」と。

住職は、青年に約束した。

ならば、娘の魂を探せるよう、仮の体を与えよう。

翌日。

村の者に青年との話を語った後、住職は命を落とした。

そして、村に平和が戻った。
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