長編2
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「おお、来たか。」
「ジイサン、で、からくりはどうなんだ?」
ニヤリと笑った源外が手にしたのは、首輪。
「ほれ、これを見ろ。『ニャイリンガルZ首輪』じゃ。この首輪をつけると、つけた猫だけじゃが、人間の言葉に通訳できる・・・はずじゃ。」
「よし、これを・・・ホウイチ、来い。」
銀時はかがんで、ホウイチの首に首輪を巻いた。
付けなれない首輪に、ホウイチは不快なのか憮然とした顔をしているが、おとなしくされるがままになっている。
つけ終わると、「押してみろ」と言われたボタンを押す。
「どうだ?ホウイチ。」
「何だか窮屈だぞ、首輪ってモンは、なあ、ギン。」
銀時の問いに、聞きなれた声が応えた。
「マジかよ。凄ぇぞ、ジイサン!!」
「当たり前じゃ、ワシは天才だからな。」
ガハハと笑う源外を他所に、ホウイチは険しい顔を銀時に向ける。
「だが、これでやっとお前さんに話が出来る。あの白い猫の話だ。」
「やっぱりお前、何か知ってるのか?」
「ああ、猫には猫の世界ってのがあってな。色々あるのさ。」
ホウイチは『最近、化け猫が復活した』という噂を語った。
猫の間でも、化け猫の話は伝わっているらしい。
そして、最近現れた白猫がそれではないか、と噂されている。
その猫は、力が尋常でなく、喧嘩を打った猫は全てはじき返された。
そして、白猫に狙われた猫は、皆死んだ状態で発見された。外傷はほとんど見当たらないのに。
そこで猫達は、『アイツに狙われると、魂を抜かれる』と恐れた。
「じゃあ、アイツは・・・」
「わからねぇ。だが、『化け猫は、他の猫の体に乗り移って、魂はいつまでも生き続ける』って話も聞く。」
「・・・」
「まあ、俺は知らねぇ猫に、この町で好き勝手やられちゃ困るってんで、マークしてたんだ。
そしたら、あの姉ちゃんと白い奴が出会った所に出くわしたんだ。」
「姉ちゃんって、月詠の事か?」
「そうだ、で、問題はココだ。姉ちゃんがあの白い奴に触れた時、そこが光ったのを、俺は見たんだ。」
「光った?」
「ああ、何の光か知らねぇが・・・何だかヤバイ気がしてな。『何してやがる』って俺が吼えたら、アイツは笑って逃げやがった。」
「笑って・・・・?」
「これは俺の考えだが、アイツ、姉ちゃんにマーキングしたんじゃねぇかな。」
「マーキング?」
「あの姉ちゃんからは、ずっとその白猫の匂いがする。白い奴は、あの姉ちゃんにそれを付けたかったんじゃねぇかな。耳は、その目印だ。」
「何で、白猫野郎がそんな事する?」
「俺が知るか。後はお前が考えろ。」
言うと、ホウイチは丸くなった。
「何だテメェ、薄情な!!!」
「うるせぇ、俺はアチコチ回って疲れてんだ。」
「んだと!このジジイ。」
「ホホウ、ニャイリンガルZは正常機能しておるようじゃな。」
茶をすすりながら、源外は横目で見ていたが、その時、ドンドンとドアが叩かれる音がした。