長編2

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「月詠姉・・・大丈夫かな。」

「大丈夫だよ、銀さん達がついてるから。」

「でもさぁ・・・」

ひのやの店先に座った晴太が、不安げに下を向いた。

やれやれ、と日輪は笑う。

確かに心配ではあるが、自分達ではどうしようもない。

何かとトラブルに巻き込まれ慣れている万事屋のほうが、こういう事に関しては上手く解決してくれるだろう、日輪はそう思っていた。


ニャオ、と晴太の足元に茶色い小さな猫が近寄った。

「茜・・・お前も月詠姉が心配なのか?」

ニャオ、と猫が鳴いた。

「あれ?晴太、その猫お前が飼ってるのか?」

ひのやの店先に座っていた客が聞く。

「ううん、オイラって言うか、勝手に住みついてるんだ。月詠姉や母ちゃんが時々餌やってるけどね。」

晴太が猫を抱きかかえる。

「お前、月詠姉には特になついてるからな。心配だろ?」


その時


「日輪さーーーん!!!」

「すぐに出入口をふさぐアル!!!」

猫を抱えて、新八と神楽が走って来た。



「どうしたんだい?二人とも。あれ?どうしたの?その猫。」

「と・・とりあえず、事情は後で・・・」

「早くしないと、追手が来るアル。」

息も絶え絶えに、二人が必死で語る姿に、日輪もただ事ではないと気づいたらしい。

「晴太、百華の所へ行ってきな!!」

「分かった!!!」

晴太が駆け出そうとした時、百華の一人が駆け寄ってきた。

「日輪様、大変です!!猫が・・・!!」

「どうしたんだい?」

「猫の大群が、吉原に入って来てるんです!!!」

「え??」

「エレベータだけでなく、空気口やら何から・・とにかく猫が・・・」

新八と神楽が顔を見合わせた。

「まさか・・・!」




ニャアアア。



複数の猫の鳴き声が、段々と近づいてくるのが、聞こえた。神楽が、金色の猫をギュッと抱きかかえる。

「新八・・・!」

「とりあえず月詠さん達を家の中へ。僕達は此処を護ろう。」

「分かったアル!晴太、ツッキーを頼むアル!!」

「え??月詠姐って・・?」

猫を渡された晴太が不思議そうな顔をした時。




ニャーオ。




気がつくと・・・

周りを猫に囲まれていた。

数十匹はいると思われる猫達は、一様に通常とは違う、殺気立った目をしている。

「これは・・・?」

新八と神楽が構えを取ると、一匹の猫が前に進み出た。

白い毛と赤い目をした、大きな猫。

「コイツが化け猫アルか?」

神楽が叫ぶ。



白い猫は、目をキラリと光らせた。

その体が光に包まれる。

その光が段々大きくなり、そして、薄れて来た。

その中から現れたのは・・・



「「ええええええ???」」



身の丈3mはあるかと思われる・・・巨大猫の姿だった。
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