銀月(前)
□夢ひとつ分。
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ひのやで店番をしている晴太の所に、銀時が来たのは昨日の話。
団子をかじりながら、銀時はそっと晴太に聞いた。
「あのさぁ・・・あの女の誕生日っていつか・・晴太、知ってるか?」
「母ちゃん?母ちゃんなら1月にもう・・」
「違うよ、日輪じゃねぇよ。」
「なら、月詠姐?月詠姐の誕生日なら明日だよ。」
「明日ぁ?」
何でお前、先にそれ言わねぇんだ?騒ぐ銀時を、晴太は不思議に思う。
「何でって・・・オイラだって、月詠姐の誕生日聞いたの、最近だし。」
去年の今頃は、月詠の存在すら知らなかった晴太だった。数日前、日輪が「月詠のお誕生日パーティ開きましょ」と言うまで、誕生日など思いつきもしなかった。
「ま・・そりゃそうだよなぁ・・・」
何故かガックリと肩を落として、銀時はじゃあな、と言って立ちあがった。
「ごめん・・銀さん、俺何か悪い事言った?」
「いや・・別にお前は悪くねぇから。大丈夫。」
心なしか寂しそうな背中を、晴太は見つめていた。
すると、日輪が店の奥から出て来た。
「母ちゃん、これで良かったの?」
月詠の誕生日の話を聞いた時。
晴太はすぐに銀時達にも教えようと言った。
それを、ギリギリまで内緒にしておくよう言ったのは、日輪だ。
「ふふふ、これが良いのよ。」
満面の笑顔を浮かべて、日輪は言った。