その他
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「最近新八と喧嘩でもしたのか?」
ある日、ツッキーが私に聞いて来た。
銀ちゃんと新八が仕事で出て行った後、私とツッキーは留守番をしていた。
今お腹に赤ちゃんがいるツッキーは、吉原での仕事はお休みしている。
掃除や洗濯は毎日してるけど、所詮狭い万事屋の事。午前中で大体済んでしまうらしく、仕事人間のツッキーはおかげで暇を持て余しているらしい。
だからと言って、クナイの手入れを念入りに行う妊婦ってのもどーだかね、と私は思いながら答えた。
「別に・・いつもと同じアル。」
新八は、だ。違うのは私。正確に言うと、私の中の何か。
それが何か、私でも良く分からない。というか、認めたくないだけかもしれないが。
「何でそんな事聞くアルカ?」
「銀時が心配しておったぞ。」
苦笑しながら、ツッキーは言った。
「なんだか良く分からぬが、ぬし等がいつもと違うのだそうだ。
しかし、喧嘩している風にも見えぬし、の。
銀時も年頃の娘相手だから持て余しておるらしい。」
あいつもすっかりオヤジじゃ。
新妻らしからぬ感想で〆ると、ツッキーはまた笑った。
ふうん。
私は内心、ドキドキする。
ツッキーと結婚できたのが奇跡と言えるくらい恋愛に縁のない銀ちゃんの事だから、何にも気がつかないと思ってたけど、さすがに鋭い。
だけど、こればかりは口にできず、私はとぼける事にした。
「銀ちゃんみたいなオヤジに、乙女のセンシティブな心は理解できなくて当然アル。私が大人の階段登ってるから、寂しいだけアルヨ。」
そうか、と言うとツッキーは私を横目で見て、またクナイの手入れを始めた。
さすが空気の読める女。これ以上の追及はしない方が良いと、理解したらしい。
全く数年前は見てるこっちがヤキモキする位にぶかったのに。
人の事となると鋭いこの夫婦は、相変わらず侮れない。
「ちょっと、散歩に行ってくるネ。」
そう言うと、私は万事屋を飛び出した。