その他
□キセキ
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今日は恒道館、再興パーティーの日。
志村姉弟の友人知人が集まり、皆で道場の復興を祝っていた。
事の始めは昨年の事。
小栗旬ノ介主演の侍映画が大当たりして、天人の間で「武道」ブームが起こり、あちこちの道場に地球人・天人が詰め掛けるようになった。
そんな折に妙の買った『モト7』が大当たりし遂に借金を完済、恒道館を無事再興させる事が出来たのである。
「姉上・・これで父上に報告が出来ます。」
「新ちゃん、これからは貴方がこの道場を守るのよ。」
ハイ、と涙ながらに答える新八に、パーティーに呼ばれた銀時達もさすがに目を潤ませる。
そこに現れたのはゴリラの影・・ではなく近藤勲。
「お妙さーーーーん!!新八くーーーーん!!!おめでとうござい・・ぐわっ!!!」
「近藤さん、私貴方を呼んだ覚えはありませんが?」
妙の蹴りを顔面に受け、地面に倒れ伏した近藤が鼻血を出しながらも手に持った花を掲げる。
「男近藤勲。愛するお妙さんの為なら、例え呼ばれる事がなくても参上するのが勤め。」
「そういうのをストーカーと言うんですが?」
「いやぁ、郵便が遅れてたんですかね。招待状が届かなかったんですよ。全く郵政民営化も良し悪しです。」
「・・人の話、聞いてます?」
相変わらずの二人を眺めていたギャラリーであったが、突然月詠の腕の中にいた弥彦が泣き出した。
「こら、ゴリラ、テメェの顔におびえて家のガキ泣き出したじゃねぇか!」
「いやぁ、子供って可愛いですね。お妙さん。」
「人の話を聞け!」
「どうですか、お妙さん、道場も再開出来た事ですし、俺と所帯もってあのような可愛らしい子供を産んでみませんか?」
「良いですよ。」
「「「「「「え?」」」」」」」
その場にいた全員が、自身の耳を疑った。
普段であれば「死ね、ゴリラ!」と蹴りの一発でも来る所であるのに・・今、妙は何と言った?
それは近藤も同じだったらしい。
その場に固まり、もう一度聞いた。
「お妙さん?俺と・・・結婚してみませんか?」
「良いですよ。」
妙の表情は淡々としていて。怒っている風でもふざけている風でもない。
「お妙さん・・良いんですか?」
「良いですよ。」
「本当ですか?」
「本当です。」
「天地天命に誓って?」
「私は嘘はつきません。」
「ホントにホントにホントにホントにホントですか?」
「ホントにホントにホントにホントにホントです。」
「でもまさか・・いや、何かドッキリですよね、これ。いや、夢見て・・・いや、お妙さん、ホントにホントに・・・」
「本当だって言ってるだろうが、このゴリラァァァァ!!!!!!!」
近藤の顔に、妙の右ストレートが思い切り入った。
その場に伏した近藤を眺めながら、妙がパンパンと手を払う。
「結婚してあげますって言ってるでしょう。いい加減、信じて下さい。」
「お妙さん・・・」
涙を目に溜め、妙を見上げる近藤。
するといきなり立ち上がり、玄関へ向って走り出した。
「俺はなんて幸せなんだーーー!!!街中の人にこの幸せを分かってもらいたいーー!!!!」
門を出たその時。
「危ない!!!」
「え?」
飛び出した近藤の目の前に、大きなトラックが迫っていた。
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「・・・近藤さん、アンタ、本当にここ一番で役にたたねぇな。」
「仕方ねぇですよ、この人は幸せになる事に慣れてないんです。」
「トシ・・総悟・・だって、俺嬉しくてぇ・・・」
全身包帯を巻いて病室のベットに横たわる近藤を前に土方と沖田がため息をつく。
すると、土方が病室の入り口を見て、椅子から立ち上がった。
「ま、何はともあれ、いいんじゃねぇのか?」
土方が顎をひょいと向けた先には、眉間に皺を寄せつつも恥ずかしそうに立っている妙の姿があった。
終
◎お妙さんって道場が復活した途端に結婚OK、って言ってくれそうな気がします。
今勲の愛を受けないのは、道場が優先だからなのです!(←フィルタです)