記念物&企画物

□サマータイムブルースの前に
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※銀さんと月詠、お付き合い前設定でいっております。その前提でお読みください。




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夏も終わりのある日、日輪は店先で一人物思いにふけっていた。

通りを歩く男達はその美しい姿に見とれ、常夜の闇の中でさえ輝き続けた、その笑顔を曇らせる原因は何かと心惹かれる。

はぁ、とため息を一つついた。
そのため息すらキラキラと輝くようだ・・と男達は思った。

「おかしいわ・・・」

日輪が呟いた。


彼女の心を憂いに包むのは只一つ。

彼女にとって妹にも等しい月詠と、彼女が心惹かれているグータラ侍の事だった。


****


『おかしいわ・・・おかしい。今年の夏、あれだけ暑かったのに海水浴の誘いがないなんてあり得ない。

銀さんがあの子のナイスバディに興味ない訳ないし、銀さんが月詠の事憎からず思ってるのも、これは確実なはず。しょっちゅう吉原に来てはブラブラしてるし。

それとも何?水着とか興味無いのかしら。一気に裸まで見たいとか、そう思ってるのかしら。

そんな訳ないわ。水着は水着。裸とは萌えが違うはず。第一お付き合いってのは段階踏まないと。あの子ウブなんだから、そういう所はちゃんとしないとね。

月詠が泳ぎが好きだって、晴太を通してさりげなく伝えてるし・・・なのにあのエロ侍が何も言って来ないなんて・・おかしいわね。』



「ねぇ・・・母ちゃん。」

「あ・・・どうしたの?晴太?」


後ろから遠慮がちに声をかけて来た息子に、日輪は笑顔で応じた。

「ねえ、母ちゃん。寺小屋夏休みだし、どっか遊びに行きたいな。」

「ああ、そうだねぇ。」

愛する息子の可愛らしい頼みに、日輪の笑顔も更に輝いた。しかし、これは悩める相談でもある。

晴太を遊びに連れて行ってやりたいのは山々だが、何分自分はこんな不自由な体だ。しかも地上にはあまり詳しくない。

吉原にも遊び場はあるが・・・さすがに8歳には早いだろう。


「どっか良い所あるかねぇ・・・?」


考えていると、ひのやの電話が鳴った。

「はい、ひのやで・・・あら、グラさん?え?明日?・・・そうなの、ありがとう。」

受話器を置くと、チン、と音がした。


日輪が、輝かんばかりの笑顔で振り向いた。

「晴太、月詠と”プール”に行っておいで。」
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