記念物&企画物
□サマータイムブルースの前に
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※銀さんと月詠、お付き合い前設定でいっております。その前提でお読みください。
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夏も終わりのある日、日輪は店先で一人物思いにふけっていた。
通りを歩く男達はその美しい姿に見とれ、常夜の闇の中でさえ輝き続けた、その笑顔を曇らせる原因は何かと心惹かれる。
はぁ、とため息を一つついた。
そのため息すらキラキラと輝くようだ・・と男達は思った。
「おかしいわ・・・」
日輪が呟いた。
彼女の心を憂いに包むのは只一つ。
彼女にとって妹にも等しい月詠と、彼女が心惹かれているグータラ侍の事だった。
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『おかしいわ・・・おかしい。今年の夏、あれだけ暑かったのに海水浴の誘いがないなんてあり得ない。
銀さんがあの子のナイスバディに興味ない訳ないし、銀さんが月詠の事憎からず思ってるのも、これは確実なはず。しょっちゅう吉原に来てはブラブラしてるし。
それとも何?水着とか興味無いのかしら。一気に裸まで見たいとか、そう思ってるのかしら。
そんな訳ないわ。水着は水着。裸とは萌えが違うはず。第一お付き合いってのは段階踏まないと。あの子ウブなんだから、そういう所はちゃんとしないとね。
月詠が泳ぎが好きだって、晴太を通してさりげなく伝えてるし・・・なのにあのエロ侍が何も言って来ないなんて・・おかしいわね。』
「ねぇ・・・母ちゃん。」
「あ・・・どうしたの?晴太?」
後ろから遠慮がちに声をかけて来た息子に、日輪は笑顔で応じた。
「ねえ、母ちゃん。寺小屋夏休みだし、どっか遊びに行きたいな。」
「ああ、そうだねぇ。」
愛する息子の可愛らしい頼みに、日輪の笑顔も更に輝いた。しかし、これは悩める相談でもある。
晴太を遊びに連れて行ってやりたいのは山々だが、何分自分はこんな不自由な体だ。しかも地上にはあまり詳しくない。
吉原にも遊び場はあるが・・・さすがに8歳には早いだろう。
「どっか良い所あるかねぇ・・・?」
考えていると、ひのやの電話が鳴った。
「はい、ひのやで・・・あら、グラさん?え?明日?・・・そうなの、ありがとう。」
受話器を置くと、チン、と音がした。
日輪が、輝かんばかりの笑顔で振り向いた。
「晴太、月詠と”プール”に行っておいで。」