記念物&企画物
□たまにはこんな日も
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「銀時、風呂へ行くぞ。」
「は?」
その日吉原へ来た銀時を待っていたのは、タオルの入った木桶を抱えた月詠の姿だった。
「風呂ってどこの?」
「近くに銭湯がある。」
「でもせっかくのデートだっつーのに・・」
「つべこべ言わず来るのじゃ。」
有無を言わさず銀時を引っ張ると、月詠は近くの『銭湯 愛の湯』へと連れて行った。
「ここって・・・」
「吉原には、ここしか銭湯が無いからのう。」
「でもこれって所謂・・・」
銀時の言葉を無視すると、月詠はさっさと中に入り番頭に金を払うと「こっちじゃ」と手招きをした。
「ごゆっくり」という番頭の言葉を背に、銀時も暖簾をくぐる。
平日の昼間という事もあってか、他に客いないのか中は静まり返っていた。
「なぁ・・ここって評判の『カップル銭湯』じゃねぇの?」
「他には遊女専用の男子禁制の湯しか無いから、仕方なかろう。」
月詠が部屋番号を見ながら廊下を歩く。『7号室』と書かれたドアの所で止まると、さっさと中へ入った。銀時は呆気にとられて、それを見送った。
「・・・どしたの?アイツ。」
『愛の湯』は噂では聞いた事がある。地上では所謂「家族風呂」と呼ばれる個室風呂だ。
だがそこは吉原。此処へはカップル限定でしか入れない。そこへ入ったカップルは、防音かつ個室の風呂でイチャイチャラブラブし放題、という訳だ。
夜になればお気に入りの遊女を連れてわざわざここへ来る客も多いらしい。
ラブホ+ソープ÷2と言った施設と、言った所だろう。
だが、月詠自らこのような場所へ銀時を誘うなど、普段では考えられない。
「何何?アイツ発情期?????」
ニヤケたい所ではあるが、いつもの恋人らしからぬ行動に、銀時は首をかしげた。