記念物&企画物
□恋人がサンタクロース
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雪の降るクリスマスイブから日付が変わって12月25日になった。
日付が変わっても、吉原の賑やかさは変わらない。
あちこちの店からはパーティーの音楽が聞こえ、女達は着飾って客を呼ぶ。
おかげで大小問わず揉め事、犯罪は尽きない。百華の頭である月詠は、夕方から夜半の今までずっと、街中を駆け回っていた。
忙しいのはわかっていたので、銀時には今日は一晩仕事だと言ってある。
銀時も予想していたのか、あっさりと、じゃあ俺もバイトすっか、と言っていた。
また一つ揉め事を片付けて、やれやれと月詠が休んでいると、部下が声をかけてきた。
「頭。少し仮眠を取られては?」
月詠は周りを見渡した。
一番賑やかなこの時間は、揉め事は多いが強盗類は意外と少ない。
店が閉まって、凶悪な押し込み強盗類の増えるのは人が寝静まった早朝だ。その前に仮眠でも取っておこう。
では後を頼む、と部下に声をかけると、月詠は「ひのや」に向って歩き出した。
夕方から降り出した雪は今は小降りとなったが、足元を白く染める位には積もった。
初めての雪の感触を楽しみつつも、これでは賊を追いかけにくい、策を考えねば、と思っていたら・・・
目の前にサンタが現れた。
「メリークリスマス。」
「・・・なんじゃ、その格好は。」
サンタの格好をしてはいるが、帽子からのぞく銀髪は、明らかに銀時のもの。
「いやいや、俺、サンタだし。」
サンタはそう言うと、月詠に小さな雪だるまを渡した。
「メリークリスマス。」
「何じゃ?これは。」
その質問には答えず、サンタは月詠の頬にすばやくキスをした。
そして月詠が反撃する前に、じゃあな、仕事頑張れよ、と言って去って行った。
・・・・変なヤツじゃ。
顔を見に来たにしては、珍しくちょっかいも出さずに帰るとは。
「ひのや」に戻ると、既に家中は静まりかえっている。
・・・家の中に持っていけば、溶けるな。
玄関前に雪だるまを置き、自室に戻る。
結局銀時は何をしに来たのうだろうか。
疑問に思いつつも、疲れと睡魔に襲われて月詠は眠りについた。