記念物&企画物

□恋人がサンタクロース
1ページ/2ページ

雪の降るクリスマスイブから日付が変わって12月25日になった。

日付が変わっても、吉原の賑やかさは変わらない。

あちこちの店からはパーティーの音楽が聞こえ、女達は着飾って客を呼ぶ。

おかげで大小問わず揉め事、犯罪は尽きない。百華の頭である月詠は、夕方から夜半の今までずっと、街中を駆け回っていた。

忙しいのはわかっていたので、銀時には今日は一晩仕事だと言ってある。

銀時も予想していたのか、あっさりと、じゃあ俺もバイトすっか、と言っていた。


また一つ揉め事を片付けて、やれやれと月詠が休んでいると、部下が声をかけてきた。

「頭。少し仮眠を取られては?」

月詠は周りを見渡した。

一番賑やかなこの時間は、揉め事は多いが強盗類は意外と少ない。

店が閉まって、凶悪な押し込み強盗類の増えるのは人が寝静まった早朝だ。その前に仮眠でも取っておこう。

では後を頼む、と部下に声をかけると、月詠は「ひのや」に向って歩き出した。

夕方から降り出した雪は今は小降りとなったが、足元を白く染める位には積もった。

初めての雪の感触を楽しみつつも、これでは賊を追いかけにくい、策を考えねば、と思っていたら・・・

目の前にサンタが現れた。



「メリークリスマス。」

「・・・なんじゃ、その格好は。」


サンタの格好をしてはいるが、帽子からのぞく銀髪は、明らかに銀時のもの。


「いやいや、俺、サンタだし。」

サンタはそう言うと、月詠に小さな雪だるまを渡した。

「メリークリスマス。」

「何じゃ?これは。」

その質問には答えず、サンタは月詠の頬にすばやくキスをした。

そして月詠が反撃する前に、じゃあな、仕事頑張れよ、と言って去って行った。


・・・・変なヤツじゃ。


顔を見に来たにしては、珍しくちょっかいも出さずに帰るとは。

「ひのや」に戻ると、既に家中は静まりかえっている。

・・・家の中に持っていけば、溶けるな。

玄関前に雪だるまを置き、自室に戻る。

結局銀時は何をしに来たのうだろうか。

疑問に思いつつも、疲れと睡魔に襲われて月詠は眠りについた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ