記念物&企画物

□刃に映る悪魔
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覚えているのは、大事な仲間が倒れる場面と飛び散る血だけ。

次の瞬間、頭の中が真っ白になった。
己の獣を呼び覚ます為に仕組まれた罠だと分かっていても、それを止める事は出来なかった。


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「刃に映る悪魔」

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我に返った時、その場に立っているのは男一人だった。

周りには、地を這いずり、呻く男達。
果たしてどれだけの怪我を負わせたのか、果たして息のある者がどれだけいるのか、男には分からなかった。
手加減など全くしなかったから。



ふと目をやると、地面に、刀が突き刺さっている。

その刃に映るは・・昔見た悪魔の姿。
白い衣と銀色の髪を返り血で濡らし、敵だけでなく仲間にも恐れられた、白夜叉の姿。
衣装の色さえ変われど、返り血を浴び、血走った目で獲物を狩る姿は、昔と一つも変わらない。



此処は何処だろう。
あの時の戦場なのだろうか。
なぜ自分は、此処に立っているのだろうか。

ボンヤリと考えていると。



目の前に女が現れた。




女は目の前の光景に、顔を曇らせる。
その目が、男の姿を捉えた。

その瞳には、狼狽の色が映っていた。

昔の仲間達もそうだった。
男の強さを賞賛しながらも、衣が血に染まるにつれ、次第に恐れるようになった。

お前には、今の俺の姿を見て欲しくない。
こんな醜い姿を見て欲しくない。
今まで隠してきた・・・本当の姿を。



「俺を・・見るんじゃねぇ。」

男は言葉を搾り出した。

「これ以上・・近寄んな。」

女は黙って男を見つめる。
その瞳には、哀しみが揺らめいている。



「俺は・・・お前みたいな綺麗な女抱けるような男じゃねぇんだよ。」

この姿を見たら、女も気付くだろう。
男がただの獣である事に。
そして、男はまた一人になるのだ。

自嘲気味に笑うつもりだったのに、何故か男の声は震えていた。

心の何処かで臆病者が叫んでいる。
嘘だ。一人になどなりたくない。
この女を失いたくは無い、と。
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