ハッピー文
□クリスマスキャロルの後には
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※同棲初めて、最初のクリスマス・・の後日談です。
***
仕事を終えた月詠が万事屋へ帰ってきたのは、12月26日の明け方だった。
23日から25日まで、吉原はクリスマスという事で大盛況。自然、いざこざも増える。そこで月詠もその間は吉原に泊まり込み、かぶき町へ帰る事はなかった。
銀時もその辺りの事情は分かっていたので、別にそれに異存は無い。
仲間とどんちゃん騒ぎしたり、サンタ姿でバイトしたりとそれなりにこちらも忙しくしていた。
吉原から月詠が帰ってきたら、遅れて来たクリスマスでもするか。そう思いながら、新八の飾ったクリスマスツリーも片付けずにいた。
朝方。
朝起きて洗顔をしていた銀時は、ガチャガチャという音で月詠の帰りを知った。
タオルを手に顔を拭きながら、洗面所を出る。
「おう、お帰り。」
「・・・ああ。」
迎えられた月詠は挨拶もそこそこに、ブーツを脱ぐと部屋へ入ろうとした。
その顔が大きなマスクで隠れている事に気がついて、銀時がその腕を掴んだ。
「どした?風邪引いたのか?」
「あ・・ああ、大丈夫、単なる鼻風邪じゃ。熱も無いし、すぐ治るじゃろう。」
「でもオメー、大層なマスクして・・・」
マスクで顔を隠した月詠は、ちらりと銀時を上目づかいで見ると、サッと視線を外す。
「人に移してはいかぬ故じゃ。当然じゃろう。」
「そりゃそうだけど、本当、熱とかねぇのか?」
「そんなに酷くは無い。大丈夫じゃ。」
一応元気そうには見えるが、この女のことだ。無理を押して仕事をする事も度々ある。
一応確認せねば、と銀時は月詠の腕を取り、そのおでこに手を当てた。
「・・・熱はねぇようだな。」
「だから、大丈夫だと言っておるじゃろ。」
手を振り払うと、月詠は部屋に入りそそくさと荷物を片付け始めた。
「あーやーしーの。」
銀時はその態度に疑問を覚えた。
何かいつもと様子が違う。
生真面目な月詠は、数日家を開けた後はいつも、「迷惑をかけなんした。」と銀時にきちんと挨拶をするし、もう少しのんびりとしているものだ。
なのに今日は目を合わせようともしない。
「こーら、何か隠してるだろ?」
「何も隠しておらぬ。」
振り向かずに答える月詠の様子に、銀時はやはりこれは何かある、と思った。
腕を伸ばすと、月詠の体を後ろから捕まえる。
月詠は予想通りじたばたするが、後ろから抱きつかれている為に上手く振りほどけない。
「こりゃ!何をする!!」
「ちゃんと言わねぇと、銀さんお仕置きしちゃうよ。」
「だから風邪をうつさんようにしておるだけじゃろうが。」
「いや・・・怪しい。」
銀時は月詠を無理やりこちらに振り向かせた。
その目をじっと見つめる。
睨みつけていた月詠だったが、顔を赤くしてすぐに視線をそらした。
「言わねぇとチューするぞ。」
「風邪うつったらどうする!」
「軽い鼻風邪なんだろうが、そんなの気にしねぇし。」
マスクを外そうとしたら、月詠が思い切り抵抗し始めた。
「何だオメー、マスクの下に何かあるのか?」
「な、何もないわ!」
「いーから、見せろ。」
「こりゃ!!!」
じたばたする月詠を押さえ、そのマスクを取った。顔を背けようとする月詠をのぞきこむ。
「・・・?」
だがしかし、その顔に別段変わった所はないように見える。
何だか拍子抜けした銀時は、奪い取ったマスクをくるくる手で回しつつ、奪い返そうとする月詠の手から逃れた。
「いつも通りじゃん、何で隠すんだ?」
「・・・では無い。」
「?」
「いつも通りではないから、見るな。」
「どこが違うの。」
「・・・」
赤くしたままの顔をのぞきこむ。
「あ・・もしかして。鼻のし・・・」
「言うな!」
手を振り払って月詠が顔をあげた。
それを見た瞬間、
「ギャハハハハハハ!!!!お前、鼻・・・!!」
銀時が大爆笑した。