D.Gray-man

□強がりな君に
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「おかえり、神田。ケガは?」

任務から帰った俺を迎えたのは、傷だらけのあいつだった。

左目の眼帯と体中に巻かれた包帯。それに点滴を引き摺って歩いている。右の頬には涙のあとが残っていた。恐らく、またたくさんの犠牲者が出たのだろう。自分もボロボロなのによく他人まで気にかけられるなと俺はいつも思う。

「…神田?聞いてる?」
俺がぼんやり考えていると彼女は顔を覗き込むようにして声をかける。あ、と呟いてニヤリと笑った。
「もしかして頭打って馬鹿になった?」
「誰が馬鹿だ。」
冗談よ、とリナリーはむくれる。
「聞いてるなら返事してよ。」
「悪い。」
「…やけに素直だね。」
それで、ケガは?と彼女。大丈夫だ、と短く答えると彼女は満足気に笑った。

「神田が無事で帰ってきてくれてよかった…。」
リナリーは笑顔のままそう呟く。けれどその目からは今にも涙が零れそうで。

「神田まで帰ってこなかったらどうしようかと「リナ、」
俺が呼ぶと彼女は何?と不思議そうにこちらを見る。

「無理はするな。」
「あぁ、このケガ?大丈夫よ、これくらい。」
「そうじゃない。」

気がつくと俺は彼女の細い体を抱きしめていた。何体ものAKUMAと来る日も来る日も戦い続けていることが信じられないようなか細い体を俺は強く抱きしめた。

「神田…?痛いよ、」
そう言ってリナリーは腕の中で笑った。
「…笑うな。」
「え?」
「俺の前で、無理して笑うな。」

泣きたいなら泣け。俺は腕に力を込めた。

少しの間があって彼女はまた笑った。

「痛いってば。」

俺の胸に顔を埋めた彼女は静かに泣いた。









(やっぱり君には)

(…わかってんだよ、馬鹿)








―――――――――――――

神田くんには何でもお見通し。
つかず離れずな幼なじみ。


ベリーショートでごめんなさい…!


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