銀色

□まるで息も出来ない人魚のように
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「姐さん?」

いつもの通りスーパーで買い物をしていると、聞き覚えのある声に呼び止められた。

「あら、沖田さん。」

声の方を笑みを浮かべて振り向くと、やはりそこには予期した通りの人物がいた。スーパーだと言うのにいつも通りの堅苦しい黒い制服を着ている―もっとも、彼の場合は着崩してはいるが。買い物か、と問われると、スーパーに来る理由なんてそれしかないじゃないですか、と笑って答えた。

「沖田さんは?」

買い物カゴを持っていない彼にお妙は聞いた。大方、ゴリラを探しに来た、とかそんなところだろう。

「局長を探しに来たんでさァ」
「うふふ。だと思った。」

早く連れて帰ってくださいよ、と嫌みを込めた営業用スマイルを向けると沖田は苦笑した。連れて帰りたいのは山々なんですがね…とつぶやいて

「さっきから探してるのに、ちっとも見つからねェです。」

呆れ気味に溜め息を吐いて、肩をすくめる動作をした。お妙は、ずいぶん隠れるのがお上手なんですね、とまた皮肉。すると沖田は少し困った顔をした。彼のこんな表情はなかなか見れないかもしれない。

「姐さんも人が悪ィや。」
「あら、どうも。」
「褒めてませんがね。」

そんなやりとりをしていると、彼は思い出したようにお妙から離れた。

「じゃあ、仕事もあるんで戻りまさァ。見かけたら屯所に連絡してくだせェ」

それじゃ、と手を上げて背を向ける沖田。
気が付くとお妙は彼の服を引っ張っていた。

「…姐さん?」
「あっ…ごめんなさい!」

自分でも何がなんだかわからず、お妙は顔を赤くしてうつむいた。それを見た沖田はここぞとばかりにお妙の顔をのぞき込む。

「もしかして俺と別れたくないんで?」
「…!?ち、ちがいますっ!」

沖田の意地の悪い台詞にお妙はさらに顔を赤くする。へぇ、と沖田がにやけていると、後ろから荒い息の音が聞こえてきた。

(…いるな。これは使えるぜィ。)

何かを確信した沖田は、お妙の耳元に唇を寄せる。

「な、なに…」
「(ちょっと協力してくだせェ)」

小声でそう耳打ちすると、沖田は顔を離して、今度はお妙の肩に手を置いた。状況が飲み込めないお妙が困惑していると沖田は

グイッ

とお妙の体を抱き寄せる。
突然のことに彼女が頬を紅潮させ固まっていると

「総悟ぉぉお!!!!俺のお妙さんに何するんだぁぁぁぁぁあ!!!!!!!」

どこに隠れていたのかゴリラ…もとい近藤が飛び出してきた。沖田は彼女の肩から手を離すと、近藤の頭を涼しい顔で掴む。

「ゴリラ確保。姐さん、ご協力感謝しまさァ。」

沖田はニッと笑って近藤を引っ張り立ち去っていった。

「お妙さァァァん!!俺は総悟には負けませんからねェェェ!!!!」

近藤が何やら叫んでいたが、お妙の耳には入ってこなかった。驚いて落としてしまった買い物かごの中で惣菜がごちゃごちゃになっている。熱くなった頬を押さえながら彼女はかごを拾い上げた。








(私は彼に、溺れてしまった)



――――――――――

久しぶりに沖妙…!
ドS総たんと
乙女妙ちゃんが好きです(^p^)ハァハァ

沖妙を語る上で局長は
やっぱキーパーソンですよね
次回はそんな話をば!








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